日本女子体育連盟学術研究
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日本人批評家が捉えたケイ・タケイの作品《ライト (Light)》の特性
細川 江利子
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2004 年 2004 巻 21 号 p. 1-20

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抄録

本論文では, ケイ・タケイ (Kei Takei武井慧1939-) の代表作《ライト (Light)》シリーズについて, 日本人批評家が捉えた特性を明らかにすることを目的とした。その結果は以下の通りである。
1.公演批評文24件を分析した結果, 日本人批評家が捉えた《ライト》の特性は次の6つにまとめられた。
(1) 日常的な動きが使われている。
(2) 遊びや童謡, 祭りや農作業など, 記憶の中にある日本の原風景が作品の中に取り込まれている。
(3) 観る者の解釈を限定せず多様なイメージを喚起させる。
(4) 重荷や労働, 絶望や死といった困難が訪れる人生を自然との関わりの中でさりげなく描いている。
(5) ダンサーの肉体は, 具体的, 受苦的 (パセティック) である。
(6) タケイの日本的肉体意識が創作の基盤となっている。
2.日本人批評家が捉えた《ライト》の特性を, アメリカのそれ (細川2003) と比較した結果, 次のことが明らかになった。
(1) 日常的な動きが使われていることと, 観る者の解釈を限定せず多様なイメージを喚起させることの2つは, アメリカでも《ライト》の特性と捉えられていた。
(2) 遊びや童謡, 祭りや農作業といった要素は, 日本の批評家には日本の原風景と捉えられ, アメリカの批評家には「原始的」と捉えられていた。
(3) 困難に満ちた人生がテーマであると捉えていることは日本とアメリカで同様であるが, 日本の批評家はそうした人生を自然との関わりの中で受け入れる傾向にあるのに対し, アメリカの批評家は訪れる困難と戦い, 立ち向かう人間の意志を《ライト》に見出し, 強い人間性の表出と捉えていた。
(4) 肉体のあり様に着目する視点は, 日本人批評家 (特に, 市川雅) に特有であった。暴力的な動きとその際の心身の極限的状況に着目したのは日本とアメリカで同様であったが, 日本人批評家 (市川) がそこに肉体の新たな局面が露呈されることを評価したのに対し, アメリカの批評家は原始的情緒など, 精神面での新たな局面があらわれることを評価していた。
3.日本人批評家は, 《ライト》にポストモダンダンスの特性 (日常的動きなど) と, アメリカの批評家以上に日本的特性 (日本の原風景など) を認めていた。さらに市川は, パセティックな (受苦の) 肉体という舞踏に通じる特性を捉えていたことが明らかになった。

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