パーソナルファイナンス研究
Online ISSN : 2189-9258
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PFビジネス戦後拡大期における大学人の関与 : 『月刊パーソナルローン』の読解を通じて
佐藤 直樹宮井 浩志
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2015 年 2 巻 p. 27-39

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抄録
本稿の対象は、消費者金融業界と大学/大学人との関わりにおける、特に業界イメージ論、その打開に向けられた業界や関連の動向である。業界と大学/大学人との関わりの歴史は古く、戦後に限ってみても、業界の黎明期から既に存在する。現在に至るまで、インフォーマルに、あるいは業界誌、研究会、学会等の場で、関わりの歴史は重厚なものがある。にも拘らず、同歴史に対する回顧はほとんど存在しない。そこで、本検討においては、業界全体に関わる大学/大学人の動向、特に業界におけるひとつの宿命ともいうべきイメージ論と大学/大学人との関わりに焦点を当てた。本稿が目的とするのは、歴史的回顧によって関わりの多様性の一端を描くことである。本稿は、同目的のために、既往研究を起点として、業界が黎明期から戦後拡大期に向かう際に、プロミストラスト社が同様の方向性で刊行した業界誌(『月刊パーソナルローン』)を取り上げ、そこにおけるイメージ論を検討した。同誌は、業界誌としても、業界への負のイメージに言説による応答の先駆的試みであった。方法としては、社会学的分析(言説分析)の方法を活用し、資料に書かれたことを分析し、イメージ論の構成/構造を明らかにすることを試みた。同考察からは、業界を取り巻く様々なアクターの存在が確認される。既往研究において示されている救済すべき被害者というアクターの視点は、被害者との関わりという局所的な位置づけであることが確認されるだろう。本稿の構成を述べれば、参照点として取り上げる『理解されないビジネスモデル』におけるアクターの構成について検討した後、『月刊パーソナルローン』におけるアクターの構成を分析・検討し、同構成における大学人の位置づけ・役割について考察する。同考察からは、大学人の役割として、他の分野の執筆と比較すると、業界に対する専門的見地からの多角的視点を提供していることが特徴である。また、当時のマスコミや世論が形成するイメージに対して業界に対する再認識を促す可能性を有していたと考えられる。さらには、業界が抱える課題とその解決に向けて大学人が一定の役割を果たしたということが確認され、『月刊パーソナルローン』の顛末、すなわち同誌は1980年に発刊終了し、JCFAによる業界誌へとその役目は継承されたという見方も可能であろう。『月刊パーソナルローン』において、大学人によって見出された「多角的な視点」は、それ自体が同業界への関与の仕方を表している。今後は、実践的課題も含めると同業界への貢献可能性の検証や視点の点検が課題となるであろう。以上、本稿は、限定的ながら、大学人の関わりについて多様な角度からの展開可能性および業界の事業展開への貢献可能性について示唆し、稿を閉じる。
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© 2015 パーソナルファイナンス学会
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