パーソナルファイナンス研究
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貸金業法が零細事業主に与えた悪影響
堂下 浩
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2015 年 2 巻 p. 41-52

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抄録
2006年12月に日本の政府は貸金業法を改正し、他の先進国には例を見ない過剰な規制をノンバンク市場に強いた。法改正により、上限金利は年29.2%から年15-20%に引き下げられ(上限金利の引下げ)、また審査時に源泉徴収票等の提出を義務付け、個人年収の3分の1を超える貸付けを原則禁止した(総量規制の導入)。信用力が劣る利用者層、特に零細事業主は深刻な貸し渋りに直面した。そもそも零細事業主からの短期の無担保資金への需要は元来旺盛であったが、一連の規制強化により貸金業者は審査の厳格化を進め、相対的にリスクの高い層である零細事業主への資金供与を締め出していった。一般に零細事業主は設備投資のような中長期的な資金需要に対して金融機関から有担保で借り入れる一方で、突発的な短期資金の需要に対してはつなぎ資金として貸金業者から無担保・無保証で借り入れていた。つまり、銀行が対応できない緊急性の高い資金需要に対して貸金業者の融資機能が銀行を補完してきたと言える。しかしながら貸金業法の改正後、100万円以上の融資には上限金利が年15%となり、資金調達の機会を狭められた零細事業主においては機会損失を生じさせたケースや緊急的な資金を調達できず廃業に陥ったケースが続出した。
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© 2015 パーソナルファイナンス学会
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