パーソナルファイナンス研究
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査読付論文
震災復興における地域商業拠点施設(ゆりあげ港朝市)に関するファイナンスの取り組み
永野 聡日詰 博文山田 俊亮
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2016 年 3 巻 p. 47-54

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抄録
 宮城県名取市閖上地区は、東日本大震災による甚大な被害を受けた。閖上地区における震災復興にあたり、地域の産業復興と雇用創出を目的として「ゆりあげ港朝市」が先んじて再建される事となった。朝市は、30年以上、地域住民や地域外の人々に親しまれた閖上地区を象徴する場所であった。しかし、津波被害で全てを失う事となった。そして、2年半の月日を経て平成25年12月1日に再開された。その一方で、津波被害により何も無くなった閖上地区で、朝市が継続した事業を行えるのか、という大きな課題も残されていた。そこで本研究では、これまでの朝市の取り組みを時系列的に整理する。特に、様々な段階におけるファイナンスが地域復興に果たす役割についてまとめる事を目的とする。その結果、朝市は震災後一定の顧客を取り戻しつつある。しかし、継続的な事業を行うには、各店舗での対面販売の充実を図る事と同時に、ネット販売事業で新規の顧客を獲得する事が必要である。また、新たなプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディング等を活用し、市場のニーズの読み込みや新たな市場を開拓する活動を行う必要がある。その事が、新たな支援者の獲得に繋がり、中長期的な視点を持った事業を計画・実施する素養を身につける事にも繋がっていく。そのためにも、今後ファンドレイジングはより一層重要な手法となる。その一方で、閖上地区における、嵩上げ工事や道路線形の変更等の基盤整備事業は、当初の計画より大幅に遅延している。その影響により、居住地としての再建は先延ばしとなっている。それら事業が大きく前進する事で、朝市本来の姿でもあった、地域住民が朝市を訪れ互いに安否を確認するといった「地域コニュニティーの場」の再興にも繋がると言える。言い換えれば、個々人のパーソナルファイナンスも含めた生活再建の像が描ける環境を整える事で、はじめて、地域としての再建が進む事となる。
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© 2016 パーソナルファイナンス学会
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