抄録
現代において、家計の金融取引が拡大している。米国において、資金調達者としての家計は、住宅ローンや消費者信用での借入を増やしてきた。また資産保有者としての家計は、住宅を中心とした不動産や株式を多く保有している。現代においては、家計が保有する資産を担保にして借入を行う金融商品などが普及してきたこともあり、家計の借入は、自らが保有する資産価値変動の影響を大きく受けるようになっている。
家計の金融取引が拡大する中で、米国金融機関は家計・個人を対象にした金融業を拡大してきた。金融機関は、対象顧客や貸付担保を広げながら、家計・個人を対象に貸付を増やしてきたのである。その際、証券化を利用し、金融機関の信用リスクを軽減するように試みてきた。しかし、2008年前後の金融危機時には、米国金融機関の貸倒費用が急増した。その中身を見ると、住宅ローンのみならずクレジットカードなどにおいても貸倒費用が急増している。金融機関による信用リスク管理は、これまで主に貸付商品ごとに行われてきた。しかし、金融危機時には、住宅価格の下落などにともなう住宅ローンの信用リスク増大が、クレジットカードほかの信用リスクにも影響を与えたのである。金融機関のリスク管理は、従来の金融商品別や事業部門別に行うだけでは、不十分となっている可能性がある。金融機関は、家計・個人を対象とした金融取引において、統合リスク管理の必要性に迫られていると考えられる。