パーソナルファイナンス研究
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査読付論文
地域資源を基点とした中山間地域でのシゴト化に向けた取組みの実態と次世代の担い手育成支援に関する研究
永野 聡
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2017 年 4 巻 p. 53-60

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抄録

織物の一大産地であった十日町において、「からむし(和苧)」は地域由来の歴史的素材である。近年、「からむし」は織物以外での活用方法(食品、芸術作品、等)に関して注目度を増している。それは「からむし」が、地域資源として地域内外の人々に浸透してきている事を意味している。そこで、「からむし」を地域資源としてより一層発展させるためにも、シゴト化を推進して行きたい。本研究では、シゴト化を「稼ぐ仕組みを構築すること」と定義する。そのシゴト化の担い手は次世代にあると捉えている。そこで本研究では、「からむし」を軸とした地域のシゴト化を目指し、活動する地域の主体への実態調査と、これからの主体となる可能性を有する地域内の次世代(小学生、等)に対して、地域学習を実施し、シゴト化への萌芽を捉える事を目的とする。加えて、担い手育成の活動を地域外より支援する側の課題も提示する事を目的とする。その結果、地域資源である「からむし」を活用したシゴト化を目指し、活動する地域の主体である村山氏の活動は、試行錯誤を繰り返し、他主体との協働化を図るソーシャルビジネスとしての様相を呈していた。一方、課題は、属人的な側面が強く、かつ、パーソナルファイナンスの最大限化には寄与しているが、多くの人々へのシゴト化へとは至っていない点である事がわかった。また、これからの主体となる可能性を有する地域内の次世代(小学生、等)に対して、地域学習を実施した。その結果、小学生の「からむし」への理解は深まったが、「からむし」を通したシゴト化を提示する事は出来ていない。その事より、キャリア教育的な側面では、一層の努力が必要であると言える。加えて、本研究のようなボトムアップ型の活動は、その広がりに限界もある。そこで、トップダウン型のアプローチも重要となってくる。「からむし」のシゴト化を推進するためにも、地域ブランド化を検討する必要があると考える。地域ブランドの確立に際しては、行政機関(十日町市)との協働を一層図っていく必要がある。また、クラウドファンディング等のソーシャルファンディングを用いて、マーケティングを実施する事も想定される。加えて、これまで構築してきた地域住民との連携をより密に行い、地域に還元できる仕組みをより一層構築する必要がある。そして、担い手育成の活動を地域外より支援する側は、継続性という大きな壁に直面している事がわかった。今後も継続するためには、各種助成金に頼るという構図も想定される。しかしながら、自立的な活動とは言い難い。そこで、真に地域に必要とされている存在であるのか棚卸しの必要性と、仮にも必要であると判断された場合、専門的知識の供与という課金モデルを提示する事も必要と考える。また、金銭的な指標で計れない地域からの各種支援をどう可視化し、意味付けるかも重要な課題である。

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© 2017 パーソナルファイナンス学会
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