パーソナルファイナンス研究
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査読付論文
トランザクションレンディング普及の背景とその政策目的に関する研究
堂下 浩
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2017 年 4 巻 p. 7-17

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抄録

厚生労働省は2015年1月に公表した「労働市場分析レポート」で、非正規労働者が近年増えた大きな原因として、増加傾向にある廃業した個人事業主の雇用の受け皿として機能していると論じた。個人事業主の廃業増加を貸金業法の影響のみで捉えることはできないが、法改正が個人事業主をはじめとする中小零細事業主の資金繰りの面で廃業に拍車を掛けた蓋然性は否定できない。

そして2016年12月に貸金業法改正から10年が経過したが、上限金利の引下げが中小零細事業主の資金繰りに硬直性を高めた状況に変化はない。我が国の開業率、廃業率は先進各国に比べ大きく見劣りするが、無担保・無保証融資という小口金融が機能していない点もその理由の一つであろう。

一方米国で急成長を遂げる新たな金融手段としてフィンテックに脚光が浴び、その国内導入への機運が盛り上がっている。米国では中小零細事業主向けのトランザクションレンディングを含め、様々なビジネスモデルのフィンテックサービスが先行しているが、これらフィンテックサービスを我が国の成長戦略に活用するのなら、中小零細事業主向け無担保・無保証融資の担い手としてフィンテック市場を先ず整備することが政策的に喫緊の課題であろう。

しかしながら日本において金融庁はトランザクションレンディングを含め、フィンテックにおける融資サービスに対する金利規制の緩和を検討していない。一方で、与党である自民党と公明党はトランザクションレンディングに関して強い関心を示し、そのサービス分野での規制緩和も示唆している。そこで、本論文では貸金業法が零細事業主に与えた影響と日本におけるトランザクションレンディングの現状を把握するとともに、立法府でトランザクションレンディングが政策的に注目される背景と目的を分析する。

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© 2017 パーソナルファイナンス学会
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