パーソナルファイナンス研究
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査読付論文
総量規制が影響を及ぼす借り手の属性に関する分析
伊藤 幸郎堂下 浩
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2017 年 4 巻 p. 19-32

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抄録

政府は2010年6月に貸金業法を完全施行し、総量規制は同時期に貸金市場に導入された。総量規制は個人年収3分の1を超える貸付を原則禁止するという規制であり、主要先進国において導入されていない制度である。政府が総量規制の導入を含む貸金業法を改正したことにより貸金市場は劇的に縮小し、当時、借り手への影響を危惧する報道が伝えられた。それにも拘わらず、総量規制が貸金市場に導入されたことによる借り手への影響を調査した学術的研究は筆者らを除きほぼ皆無であった。そこで本研究は、総量規制が借り手に与えた影響を債務状況から分析し、総量規制の実効性を検証することを目的としている。

本稿では、総量規制導入後の1年間に及ぶ借り手の返済に関するデータを大手貸金業者2社から収集し、規制の導入が借り手の返済行動に及ぼした影響を属性別で分析した。以上の分析から、総量規制導入後において返済能力を有する借り手の信用力が悪化したという結果を確認することができた。総括して、総量規制が貸金市場への規制として、その実効性に疑問を投げかけた。

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