2018 年 5 巻 p. 49-62
本稿では、コミュニティバスの運行について、受益者負担のバランスを公共と個人のファイナンスの視点から考察する。地方では、路線バスの維持が困難な状況にある。移動手段を確保するために、路線バスの代わりや公共交通機関がない地域の移動手段として、コミュニティバスを自治体で運行する事例が増えてきている。公共交通機関の維持は、行政や民間の投資が必要であるが、それを利用する人々(受益者)の負担も必要である。福井県の市町におけるコミュニティバスの実態調査を行い、他の地域の事例と比較し、行政負担と受益者負担の調和及び今後の展望について提案を行う。
コミュニティバスの運行経費を削減するために、デマンド交通を採用する自治体もあるが、一概に、デマンド交通が効果的とは言えない。市民が地域にとって、コミュニティバスは必要なもので、運行は地域が主体であるという意識の定着が必要である。移動手段の確保が深刻な問題となっている過疎地では、新たな交通手段を模索して、地域住民による合法的なライドシェアが行われている地域もあり、そのような地域では、移動手段の維持は必要不可欠とされている。利用者が運賃を支払うだけでなく、クラウドファンディングによる支援を行うことや自治会費等での負担金を支払ってでも、コミュニティバスを地域に走らせたいと思う政策を行うことが必要である。
市民が自分たちの利便性の向上のために、受益者負担による、地域の交通網の整備を行うこと、まちづくり会社が地域の各事業者、大学等を巻き込んで、産学官金民が連携して課題解決を行うことを提案する。