日本精神保健看護学会誌
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うつ病患者の看護の経験 : 印象に残った患者のエピソードを通して
荻野 夏子
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2001 年 10 巻 1 号 p. 63-71

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抄録

本研究の目的は、3-5年目の精神科看護者8名に対する非構成的面接をとおして、うつ病患者を看護する看護者の経験を明らかにすることである。結果、看護者は多くの困難に直面していた。1)患者の言語表現の少なさや拒絶的な言動のために、患者の状況が掴めず信頼関係を築きづらいこと。2)患者の依存や甘えを受け入れたいが、患者に巻き込まれたり、患者のADLへ悪影響を与えるのではと怖れていた。3)患者の死にたい気持ちに関わること。実際に自殺企図に遭遇する経験は、看護者には心的外傷となっていた。看護者は全員無力感や、自責感などの抑うつ的な感情を強く体験していた。しかし、数名の看護者は患者からのフィードバックを得て自分の経験の意義を知り、癒された体験を持っていた。うつ病患者の看護において、看護者の感情体験が重要であった。看護者を支えるためには、周囲のサポートと患者からのフィードバックを得てゆく事が重要であった。

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© 2001 一般社団法人日本精神保健看護学会
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