2016 年 25 巻 1 号 p. 12-18
患者のためにと思うケアリング志向の強い看護者は,倫理的問題にうまく対処できないと離職してしまうことが多いとされている.本研究では,精神科病院に勤務する精神科看護者を対象に,倫理的感受性と看護実践における倫理的悩みとの関連を検討する.
精神科看護者に倫理的悩み尺度精神科版(MDS-P),倫理的感受性質問紙(MSQ),属性などからなる質問紙を実施,914名の回答を得た.MSQの3因子とMDS-Pの3因子との間には全て有意な相関がみられた.倫理的感受性は自分の倫理的役割を自覚し,それを果たそうとする態度であり,倫理的感受性の高い看護師ほど,それを果たせないときに感じる倫理的悩みが強くなるのは当然ともいえる.ただし,倫理的悩みには他の心理的特性や病院の体制などが影響している可能性も示唆された.また,看護経験年数と倫理的悩みとの相関は見られず,経験年数が問題への対処能力と対応していないと考えられる.