2022 年 31 巻 1 号 p. 29-38
アパシーは認知症患者の行動・心理症状の中で出現頻度が高い症状であるが,すぐさま問題にならず,他のケアが優先されることで見過ごしやすいことが指摘されている.本研究では,アパシーのある認知症患者に対する看護の熟練者の看護実践を明らかにした.
精神看護専門看護師など認知症看護の熟練者11名に対し,半構成的面接によるインタビュー調査を実施した.「アパシーのある認知症患者に対する看護実践」の観点から調査を行い,質的帰納的に分析した.
その結果,【意思や感情が生きていることを忘れずに反応を気長に待つ姿勢】【その人らしさを発揮できる機会の設定】【リカバリー促進に向けたストレングスやなじみの関係の活用】【情動的な反応を引き出す意図的な刺激】【症状がアパシーではない可能性を考慮したアセスメント】【現在の機能維持に向けた日常生活支援】の6カテゴリが生成された.アパシーのある認知症患者に対しては,アパシーが頻出することを念頭に置いたアセスメントや,その人らしさを尊重できるような働きかけが重要である.