2022 年 31 巻 2 号 p. 10-18
本研究は,特有な関わりづらさがあり,原因がはっきりとしない身体症状を訴え続ける患者との関わりのプロセスから,なぜ患者は身体を通して訴えるのか,その背景には何があるのかを考察することを目的とした参与観察を用いたフィールドワークによる質的記述的研究である.研究参加者は精神科病院に長期入院している女性患者2名である.フィールドワークを1年間で全50回行った.身体を通して訴える患者の特有な関わりづらさには不安定なアタッチメントパターンがあった.彼女らの語りから,その背景には外傷体験による孤立無援感があることが分かった.身体症状が持つ意味として,【人を近づける方法】【入院していることへの意味づけ】があった.私との関わりの中で,彼女らは【語りの変化】【受動性から能動性へ】【感情表出】の変化がみられ,関わりの中での私の役割として【そばに居続けること】【証人】【身体ケアを含めた時間を決めた関わり】があった.