2023 年 32 巻 1 号 p. 19-27
メタ認知トレーニング(Metacognitive Training:以下,MCT)は,統合失調症にみられる認知の偏りを修正することを目的とする心理教育プログラムである.本研究では,退院後の統合失調症者にMCTを実施し,認知の偏り,実施者と対象者の信頼関係に対するMCTの効果を検討することを目的に行った.精神科デイケア,NPO法人を利用する統合失調症者12名を対象としMCTを実施した.また,評価項目としてJapan-Cognitive Biases Questionnaire for Psychosis(以下,JCBQp),心の理論課題,心理的距離の測定を行った.その結果,MCT実施前後でJCBQp合計得点が有意に低下し,構成因子である「異常な知覚」「脅威的な出来事」「意図的」「破局化」「結論への飛躍」「感情的推論」で有意差が認められた.心の理論課題で有意差は認められなかった.心理的距離は近づく群と遠ざかる群のどちらもみられ,MCTは実施者と対象者の間に信頼や好意,親しさといった関係性以外の影響も与えている可能性が考えられた.