2024 年 33 巻 2 号 p. 95-100
――ただ今より特別講演を開始いたします.座長の岡田先生よろしくお願いいたします.
岡田:座長を務めさせていただきます,国際医療福祉大学成田看護学部の岡田佳詠です.どうぞよろしくお願いいたします.
特別講演の講師の先生をご紹介させていただきます.藤澤大介先生は,慶應義塾大学医学部准教授,慶應義塾大学病院の病院長補佐もなさっております.1998年に慶應義塾大学医学部を卒業され,横浜市立市民病院,桜ヶ丘記念病院,国立がん研究センター東病院精神腫瘍科,米国マサチューセッツジェネラルホスピタル精神腫瘍行動科学部門,慶應義塾大学医学部精神神経科専任講師などを経て,2018年から現職であられます.
藤澤先生は,現在,日本認知療法・認知行動療法学会の理事長で,アジア認知行動療法学会の次期理事長もお務めの予定です.また,日本サイコオンコロジー学会の理事,国際サイコオンコロジー学会の理事もなさっています.厚労省の認知療法・認知行動療法研修事業のスーパーバイザー,国際認知行動療法協会の認定セラピスト,認定の評価者でもあられます.『認知行動療法実践ガイド 基礎から応用まで』『もう一歩上を目指す人のための集団認知行動療法治療者マニュアル』等,多数のご執筆等がございます.
藤澤先生には,本学会が2021年と2022年に日本認知療法認知行動療法学会と共催で行いました認知療法・認知行動療法の研修会・セミナーの際に講師をお務めいただいました.
私も,藤澤先生には研究や実践,特に最近では集団認知行動療法のほうでお世話になっている先生です.それでは藤澤先生,どうぞよろしくお願いいたします.
藤澤:今日は友情出演みたいな気分で来ましたので,丁寧にご紹介いただき感激です.お招きいただきありがとうございます.岡田大会長はじめ,大会の準備をしてこられた皆さんに御礼申し上げます.
日本認知療法・認知行動療法学会の理事長の立場から,本日は認知行動療法を少し整理してみたいと思います.タイトルは「4つの習得レベルと14の基本原則」です.最初に14の原則から,限られた時間ですのでポイントを絞ってお話しします.
14個の原則の第一,――これは最初にして最も重要な原則かもしれません――認知的概念化です.「認知療法・認知行動療法って何?」と言った時,それは概念化だよと言っても言い過ぎではありません.認知療法とは,概念化を行い,それを継続的に修正して,治療の計画プランを立てていく治療です.
アーロン・ベックも,「(認知療法はさまざまな形態をとりうるが)どういう形態を取ろうとも,すべて認知的概念化に基づいており,対象となっている問題の特有の信念,考えを扱い,それを変えるために行動的な戦略を用いる」と書いています.
概念化conceptualizationとは,コンセプト,別の言葉では,見立てやアセスメント.もう少し平たく言うと,「今日入院した患者さんってどんな人?」というのも見立てです.「申し送り」もそうかもしれません.そういったことを柱にして治療を進めることが概念化です.
特に,認知と行動,「こんな考え方を持っている人」「こんな行動のパターンを取りやすい人」と理解し,それに沿ってケアを進めれば,そのケアは認知行動療法になります.
概念化は3つの柱で理解するとよいでしょう.
1つ目の柱は基本的な概念化です.先ほどの岡田先生のご講演でも触れられましたが,認知・行動・気分・身体がつながっています.患者さんはたいてい,気分か身体のどちらかの不調を訴えていらっしゃると思います.気分や身体を直接治すことは難しいですが,それらは,認知(物事の考え方)と行動(どう振る舞うか)とつながっており,認知や行動は変えることができるので,そこに働き掛けることで,気分や体調も変えていけると理解できます.
私たちは日々,瞬間・瞬間の出来事に対していろいろな考えが浮んでいます.どのような考えが出やすいかは,広く言えばその人の性格ということになりますが,そういった性格を形づくっているのは,その方の生育歴やこれまでの体験から,そのように考えるパターンができているから,いろんな場面で似たような反応を起こすことになります.これが基本モデルです.
2つ目の柱は基本感情とそれに対応する認知・行動です.人間の基本感情を大きく4つに分ける考え方があります.1つは楽しい感情ですが,それが臨床で問題になることは少ないので残りの3つ(悲しみ・不安・怒り)について考えてみましょう.それぞれの感情について,気分・認知・行動が相互作用をしています.
例えば悲しみというのは喪失,何かを失ってしまったり,手に入るはずだったものがなくなってしまったり,という認知に基づいています.そういった体験をしますと,私たちは元気がなくなってしまって,すごすごと引き下がるという行動(退却)を取りやすくなります.逆に,行動によって気分や認知が強化されるということが起きます.すごすごと引き下がって部屋から出てこないと,これからの未来や現実が変わっていかないわけで,喪失という認識と悲しみのまま,時間が止まってしまうということが起きます.
止まってしまった時間をもう一回時計を動かし始めることによって,失ったと思ったものの中から新たに手に入るものを見つけたり,失ったと考えていたけれどもいろいろ話し合ってみるとそうでもないと気づいたりするわけです.私たちの行動・気分・認知は相互に影響しあっていて,そのパターンを見つけることによって,どこに働き掛けると,その人がはまり込んでいるパターンから抜けられるかということを考えていけると思います.
基本感情の認知行動パターンにもとづいて,悲しんでいる人,不安そうな人,怒っている人を見たら,その人の頭の中では,それぞれ,喪失,危険,不当,の認識があると考えながら話をきいてみるようにします.怒りは「不当」という認知と関連します.こうあるべきなのにそうしてもらっていないという,その人が持っていた期待と現状との乖離が怒りを生むわけです.その人の頭の中の現実と期待のギャップはどこにあるのか,などと考えると怒りの理解ができるわけです.
患者さんをアセスメントする際は,気分・認知・行動の三つ組みを理解するよう努めます.さらに,患者さんの認知(考え)の正確性と機能性を評価します.患者さんの考えが,どのくらい客観的に正しいか.そのように考えることは何か患者さんに役に立っているか,などを評価することによって,患者さんへの語りかけが変わってきます.
客観性について,患者さんの認知には,患者さんの思い込みの部分と,現実的な部分とあります.例えば,ある場面である患者さんが「自分は仲間から嫌われている」などの発言をしたとき,表面的に励ますなら,「いや,そんなことないですよ」と言いたくなりますけれども,その方は,もしかするとコミュニティの中で本当に避けられている可能性だってあります.それを確かめていく必要があります.実際に避けられているのであれば,どうすれば新しい仲間を作れるかとか,どうコミュニケーションを取るかというアプローチになりますし,患者さんが自分は嫌われていると頭の中で信じ込んでいるだけであれば,そんなことはないという証拠を一緒に見つけていくことになります.
一方,正しいかどうか客観的かどうかはわからないけど,今この場でどう考えておくとうまく振る舞いやすくなるか,気分が楽になるか,という「機能性」も考える必要があります.
例えば,明日はみんなの前で話す,という時に,「緊張して失敗したらどうしよう」という考えが湧いたとします.その考えには機能的な部分も非機能的な部分もあります.失敗したらどうしようと怖くなって舞台に上がれなくなったら非機能的ですが,失敗したらどうしようと思って,前日必死に練習をしている時にはむしろ機能的に働いているわけです.患者さんが目指したいところに役立つかどうかを考え,役立っていればそこにあえて介入しなくてもいいかもしれない.そんなことになります.
まとめると,ある場面で,患者さんにどんな考え,気分がわいているかを評価し,客観性・機能性・確信度に応じて,介入したほうがいいのか,傾聴するだけでいいのか,をアセスメントします.
概念化の3つ目の柱は疾患特異的な概念化です.皆さんにも考えていただきたいと思います.うつ病ってどんな病気? 不安症って何? 慢性痛ってなぜ起きるの? みたいなことを患者さんに説明するとしたらどうしますか.ここでは,うつ病の症状症状を聞いているわけではありません.うつ病って心の中で何が起きている状態の? という説明です.
認知行動療法は,最初に公式を患者さんに伝える治療法だと言われることがあります.患者さんの心のメカニズムを,医療者と患者さんが同じレベルで理解して進めていくんです.だから,不公平じゃないんです.医療者のほうが偉くて,患者さんはよく知らないから話を聞くんじゃなくて,私たちの心の法則は一緒で,心の仕組みはこうなっているんだよね,私もあなたも.で,法則に当てはめていくと,○○さんの心の中は今どういう状況?と一緒に考えることになります.
うつ病には幾つかの理論があります.有名なものは「うつ病の否定的認知の3徴」と言われるものでしょうか.うつ状態になると,現実よりも物事をマイナスに偏って見ることが多くなります.自分自身に対する評価,周りの人々に関する評価,これからどうなっていくかという将来に対する評価が,現実よりも悲観的になっています.患者さんとの対話の中から,その人に見えている自分像,他人像,将来像を聞き出し,ちょっと極端にマイナスの部分に目が行ったり,見えてないポジティブな部分があったりするんじゃないか.そんなことを評価しながら,患者さんに見えていないポジティブな部分に目を向けてあげることによって,認知の転換ができるのです.
行動の理論もあります.2つ有名なものがありますが,1つは,行動活性化療法の柱になっている理論です.うつ病の症状としてあまり動かなくなります.身体活動の低下です.私たちは活動することによって,「楽しい」と「達成感」の2つを手に入れ,その2つをエネルギー源にして,エネルギーを自家発電しています.動かなくなると自家発電できなくなるので,元気になる機会を失ってしまいます.うつ病は,急性期では一息休憩を入れたほうがいいんですが,一段落ついたら,休憩していてもそれ以上良くならなくて,むしろ,無理ないペースでどう活動を取り戻し,その中で楽しい・嬉しい・頑張った感に出会えるように,仕組みを作ってあげることが行動活性化にもとづいた介入ということになります.カウンセリングだけでなく,日々の看護業務とか,病棟でのアクティビティであるとか,そういったことにも行動活性化の考え方は活かせると思います.
3つ目は問題解決療法の背景になっている理論です.うつ病の病理の1つに,目の前にうまくいかない問題が転がっていて,それに圧倒されているという理解があります.ですので,うつ状態の患者さんにお会いした時は,この人は何にぶつかって何がうまくいかなくて困っているかという,問題の共有することから始めてみます.問題の解決策を見つけることができれば,少し希望が見えて明るくなるわけです.問題解決に関連するもう1つ問題は,目の前の具体的な問題がどうかということだけではなく,問題にぶつかってうまくいかない体験を繰り返すと,「どうせうまくいかない」という投げやりモードが私たちを支配し始めます.「学習性無力」と言います.するとはじめから問題に取り組む気が失せてしまったり,取り組んでもできないというところでストップしてしまったりするのです.最初は一緒に手に取りながら小さな課題を解決し,その体験を通じて「やればできるかもしれない」という,最初の一歩を歩んでもらうことが,問題解決に対する根本的な構えを変えることにつながります.最初は非常に小さなステップでも一緒に者さんのペースで歩むことが,患者さんが自分で歩き始める最初の支えになります.
不安の認知モデルについても話します.不安は算数の分数です.分母と分子があります.不安というのは,一言で言うと危険に関する認識です.それが分子になります.危ないと思うと,私たちは不安や恐怖を感じます.危険だという思いが大きければ大きいほど不安になります.分子が大きいほど大きい数になりますね.分母のほうには,自分自身の対処能力に関する認識と,周囲からのサポートの認識があります.分母は大きくなればなるほど数は小さくなります.
不安・恐怖を覚えている人には,どんな危険を心配しているかを評価して,それに対して自分に何ができるか(自己対処能力),周りからのサポートをどう考えているかということを評価することで働き掛けのポイントを見つけることができる可能性があります.不安症の方は,分子である危険を過大評価(現実より大きく見積もる)し,分母にある自己対処能力や周囲からのサポートを過小評価していることが多いのです.
不安は行動によっても増幅・遷延します.安全確保行動Safety Behaviorという,安全策を取ろうとして,かえって不安を長引かせる行動のことを言いますが,具体的には回避とか強迫が,不安を遷延させます.
私たちは怖いものがあると避けたくなります.避けた瞬間は安心しますが,避けている限り,怖いという認識は変わらないんです.たとえば,人前でしゃべるのは怖いなーと思って,そういう機会からずっと逃げていると,人前でしゃべることへの自信は絶対に生まれてこず不安なままですよね.過度に避けたりしている行動をどうやって減らしていくかということ.たとえば,段階的暴露などが不安を長期的に良くしていくことに役立ちます.
不安症の中にはパニック症,社交不安,PTSDなどがありますが,それぞれの疾患に応じて,もう少し細やかな概念化がありますので,目の前の患者さんの問題・障害に応じて,より詳しい概念化モデルを理解し,それに応じた対応をしてください.
精神症状だけでなく身体症状についても,認知行動モデルが描けます.1例として慢性痛の患者さんは,持続する痛みがあると,体をかばってあまり体を動かさなくなります.すると筋力が落ちたり,関節が硬くなったりするわけです.そういう方が久しぶりに動くと,久しぶりなので筋肉痛や関節痛が起きたりするわけですが.そうすると患者さんは,「動いたら痛くなったのでやっぱり動いちゃいけない」という思いをより強くしてますますドツボにはまるということが起きます.さらに,将来のことをマイナスに考えたり,人間関係の変化が起きて,落ち込みが増えて,それがさらに痛みを増幅するというパターンが形成されたりします.このように患者さんの行動を動かしている背景にある心配(認知)を評価することで,このパターンの中のどこに働きかけられるかを考えていくことができます.これも概念化の活用法です.
一人一人のクライエントに固有の概念化を立てるには,いろんな場面での患者さんの様子をためていくと,その人のパターンが見えるようになってきます.患者さんにとってもそれが自己理解と修正の手がかりになります.
認知的概念化には概念化シートを用いてもよいです.概念化シートの一番上段は,生育歴,先行要因,その人のこれまでの経歴みたいなことを書きます.真ん中は,媒介信念・中核信念と書いてありますが,そういった人生経験の結果,こういう考えのパターンを持つようになったということを書きます.4列目はコーピング戦略です.困った場面でその患者さんはどういう解決策を取りやすいかを書きます.その下は,いろんな状況でわいた,考え・感情・行動を書きます.いくつかの状況を書いてみると,パターンが見えてきます.そのパターンを理解するには,これこれこういう経歴があったからそうなんだなということがわかることもあるでしょう.
例えば,ある患者さんが,小さい時にご両親が離婚して,お母さんが出ていってしまったということがあったとします.そういった経験をしていますと,そういう経験をしていない人に比べると,自分は愛されないとか,人間って利己的なんだな,みたいな考え方が形成される可能性があることは理解しやすいですね.
そういう背景にあり,「自分が悪い子だったからお母さんが出ていったのだ」という認識があったならば,自分はいつもいい子でなきゃいけない,優秀でなきゃいけない,人は信頼しても裏切られる,みたいな考えを抱きやすくなる可能性があります.その結果,人を頼らず自分だけでやろうとする,といったコーピングパターンを取りやすいことが理解されます.
最近強調されているもう1つの概念化は,“強みに注目した概念化”です.臨床ではどうしても患者さんのネガティブな部分に目が行きがちですが,その人が持っている強みやプラスの部分,本人からは語られにくい良さに注目し,それをうまく活用していくことを同時に考えられるといいと思います.
例えば,先ほどの例でも,幼少期に両親が離婚して寂しい思いをされたという反面,そういった逆境的な環境をどのようにしのぎ頑張ってきたのか,に着目すると,その人の強みが見えてきます.つらい状況をどう耐えたか,両親以外に誰かサポートしてくれた人はいたのか,みたいなことが着目されます.たとえば,「両親が離婚した中でも学業を頑張って卒業した」「つらい時に部活や事業に集中して頑張った」「親は信頼できないと思ったが先生やコーチにいい人がいて救いになった」などといった,患者さんからは自発的には語られない強みや,患者さんを支える認知や行動が見えてきます.
それは,先ほど岡田先生も触れられたリカバリー指向認知療法(Recovery-oriented Cognitive Therapy: CT-R)の考え方にも通じます.CT-Rは,病理や症状に注目するよりも,ご本人自身の目標,リカバリーを重視し,強みに焦点を当てることになります.CT-Rでは,アスピレーションaspirationを介入の核にしています.アスピレーションという言葉や概念は,恐らく今後,精神科領域の1つのキーワードになると思います.
アスピレーションaspirationとは,辞書には希望,願望,切望などと書いてありますが,語源は,respirator(人工呼吸器)でおなじみの“息”です。spiritが“魂”とか“息”という意味であり,アスピレーションとは,息を吹き込むとか,魂を吹き込むとか,そういう意味になります.
その人にエネルギーを与えてくれるものとか,ワクワクさせるもの,元気づけてくれるものみたいな感じで,高尚なものでなくていいんです.そこに触れると何か元気になる.そういうものを,どういうふうにその人の生活の中で一緒に見つけて,話題にして,そのためだったらちょっと頑張ってもいいかもというものを見つける.そういうことです.
今日の私は,顔なじみの岡田先生に会って,成田で飛行機を見て,ウナギを食べる,というアスピレーションの源がいっぱいあります.とてもいい一日です.そういうワクワクを患者さんと共有し,作っていくことが大切と思います.
認知行動療法の14の基本原則のその2は,安定した治療関係です.認知行動療法にはいろいろなスキルがありますが,スキルの前に,「この人とだったら一緒にやってもいい」という信頼関係が大切です.いわゆる基本的なカウンセリングスキルです.エビデンスにもとづいた基本的なカウンセリングスキルは,拙訳書『認知行動療法実践ガイド・第3版』(星和書店)に載っていますが,「目標の共有」「共感」「肯定」「自己一致・誠実genuine」などがあります.genuine(誠実)とは,本物っぽい,嘘っぽくないという意味で,人として自然に接していて職業的に接しているんじゃないという感じを,共有できるかどうかです.いくら口だけいいことを言っていても,信頼できなければカウンセリングはうまくいかないわけです.本音でしゃべってくれているなという感じも含まれます.「同時性・適時性」も大切です.これは,患者さんが何か話したりしたその瞬間に反応してくれる.ちゃんとビビットに触れ合っているかどうかです.後からああだこうだと言っても嘘っぽくなっちゃうんです.
日本認知療法・認知行動療法学会のホームページからは,AMED研究で作成した,認知行動療法の基礎スキルのテキスト(「認知行動療法の共通基盤マニュアル」)がダウンロードできます(https://jact.jp/).ここにも基本的なカウンセリングスキルが書いてあります.
患者さんとの関係性をつくることは,理屈は簡単ですが,苦手な患者さんとのカウンセリングでは困難となることはあります.自分自身の気持ちを否定しないで,自分自身に認知行動療法の技法を用いることで,医療者自身が落ち着くことも大切です.
私たちの苦しみを生み出す源は,心の中の考えと現実とのギャップです.自分自身の心の状態をアセスメントすることは大切です.自分が,患者さんに抱いている期待は何か,その期待は妥当か,を検討します.
残り時間が短くなってしまいました.認知行動療法の習得の4つのレベル,についてほんの少しだけ触れておきます.
認知行動療法の技術の習得レベルは,基本的なカウンセリングスキル,という土台の上に,知識(頭で分かっていること),実践力(知識を行動として具現すること),応用力が乗っかって4つのレベルで存在しています.知識は講義や自習で学べますが,それ以外は実践で磨くことです.最初は机の上の勉強でできるかもしれませんが,後半は自分ひとりではなく,スーパービジョンや仲間内で練習が必要ですので,自分の中で今どのレベルにあって,どういった環境を整えれば,それが身につくか.そんなことも考えていただければと思います.日本認知療法・認知行動療法学会のウェブサイトもご一覧ください.ご清聴ありがとうございました.
岡田:藤澤先生,ありがとうございました.14の原則を全部お聞きしたかったですが,抄録に分かりやすく項目が書いてありますので,皆さまご参照ください.
先ほど先生からご紹介いただきました共通基盤マニュアルは,他に,「認知行動療法における多職種連携マニュアル」や「統合失調症の認知行動療法(CBTp)」もあり,無料ですし,今の認知行動療法に共通で理解すべき内容とご理解いただいて,ぜひダウンロードしていただけたらありがたいです.
藤澤先生には,本学会でもお世話になりましたし,認知行動療法の概念化のところを分かりやすくご説明いただきまして,ありがとうございました.また看護に活かさせていただきたいと思います.