本研究は,水需要のうち,私的財としての側面が強い工業用水についての分析である。工業用水は価格が安いことから自由財的な感覚で大量に使用されてきたが,排水にともなう水質汚染や地下水の汲み上げによる地盤沈下等の環境問題も絡んで,その開発,利用・用途に関しては今後ますます大きな問題になることが予想される。
本研究は,以上のような現状を踏まえ,工業用水についての将来需要動向を検討するためのモデルを,計量経済学的分析方法を用いて構築したものである。モデルを構築するにあたって,産業別の出荷額・用水使用量および予測の精度を考慮して,製造業を10産業に区分した。各産業ごとのモデルは,①生産関数,②回収率関数,③工業用水量関数,④回収水量定義式,⑤補給水量定義式で構成されるが,モデル全体の特徴として以下の点があげられる。
・用水量を生産要素の1つとして,生産関数に導入したこと
・用水使用量水準,上限回収率および技術進歩水準を考慮した回収率関数をモデルに取り入れたこと
・工業用水量関数に用水価格水準を明示的に取り入れたこと
なお,モデルは同時決定タイプとなるため,二段階最小二乗法を用いて推定した。
本モデルを用いて2000年までの将来予測を試み,併せて水資源施設整備には非常に長期間を要することを考慮し参考として2010年までの予測を行った。