応用統計学
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研究論文
空間データに対する交互作用モデルを用いた変化係数曲面の推測について
冨田 哲治佐藤 健一柳原 宏和
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 39 巻 2_3 号 p. 59-70

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抄録

経時測定データにおける回帰モデルにおいて,時間とともに変化する説明変数の効果は変化係数として評価される.一方,空間データに対しては,説明変数の効果は空間上の位置に依存した曲面として評価され,地理分布を視覚的に理解するのに有用である.このような曲面としての回帰係数(以下,変化係数曲面)は,固定された位置周辺の近傍データに対してカーネル平滑化の要領で局所的な回帰を繰り返すことで推定される.しかしながら,空間上の位置についての連続性がないために空間全体を通した曲面としての信頼区間の構成および有意性の検定が困難であった.本稿では,変化係数曲面の構造が基底と未知パラメータの一次結合で表現されるものに限定し,説明変数と基底の交互作用として表現することで変化係数曲面を推定し,Satoh and Yanagihara (2010), 佐藤・柳原・加茂 (2009)で提案された経時測定データに対する変化係数に関する推測方法を,変化係数曲面の推測に適用することを試みる.提案手法は,交互作用モデルで記述された変化係数曲面であれば,より複雑な回帰モデルにおいても適用可能である.また,位置情報は空間座標に限らず,時間や測定条件などの変数を位置情報の代わりに用いることも可能である.解析例では,空間データと, 時間と年齢を位置情報とみなした生存時間データに対する変化係数曲面の推定を紹介する.

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© 2010 応用統計学会
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