抄録
がん臨床研究において,予後に影響を及ぼす要因(予後因子)を探索することは重要である.このような要件のなかで諸種の生存時間CART法が提案されており,多くの実践事例が報告されている.ただし,生存時間CART法は初期分岐に依存しており,また,高次の交互作用をモデル内に含む惧れがある.本研究では,Tibshirani and LeBranc (1992)によって提案されたABLE(Automatic Binary Logistic Estimation)法を生存時間研究に拡張した方法,すなわち生存時間ABLE法を提案した.生存時間ABLE法は,生存時間CART法と同様に,交互作用をプロダクション・ルールで解釈できるだけでなく,主効果の影響を解釈できる.また,生存時間CART法では終結ふしの解釈がKaplan-Meier曲線の省察に終始するが,生存時間ABLE法ではハザード比により,主効果あるいは交互作用を評価できるため,予後への影響の強さを数値的に評価できる.生存時間ABLE法の適用は文献事例により評価した.また,性能の評価は数値検証を通して,LeBlanc and Crowley (1992)によって提案された生存時間CART法と比較した.その結果,生存時間ABLE法は主効果を適切に捉えることで生存時間CART法に比べて適合性能に優れていることが確認できた.