応用統計学
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研究ノート
振動を伴う状態変化過程のデータを用いた安定状態の推定
猪俣 考史鎌倉 稔成後藤 順哉
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 43 巻 1-3 号 p. 45-57

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抄録

生産性や品質の向上を課題とする製造現場においては,工程の状態を精度よく把握したいという要求がある.本研究で取り扱うヒートシール工程は,金属の伝熱を利用した工程であり,制御の応答速度が遅いという特徴を持つ.この様な応答速度の遅い工程を観測すると,稼働開始直後など状態変化が発生した際,観測値は振動を伴って安定状態に移行していくことが見られる.本研究は,振動を伴う状態変化過程をモデル化し,これを適用することで,安定状態を精度良く推定することを目的としている.
まず時間遅れを有する微分方程式をベースとして,観測データを表す非線形振動モデルを構成した.このモデルを利用して,安定状態の定義を行い,振動が任意の許容差に収まる時刻の信頼区間を求める手順を構成した.モデルのパラメータの推定は非線形最小二乗法として定式化したが,これは複数の局所的最適解を有する非凸関数の最小化問題となる.大域的最適解を目指すために,局所的探索のアルゴリズムの選択とモデルの特徴を利用した初期値の設定法を提示し,これをシミュレーションデータを用いて評価した.そして,実際の工程の観測データに適用し,状態変化過程のモデル利用を通じて,安定状態を精度よく推定するための一連の手法を提示する.

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© 2014 応用統計学会
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