応用統計学
Online ISSN : 1883-8081
Print ISSN : 0285-0370
ISSN-L : 0285-0370
事例研究
暗号資産市場における最小分散ポートフォリオのリスク・リターン分析
大屋 栄中北 誠鳥谷部 智規久保田 尚希中妻 照雄
著者情報
ジャーナル 認証あり

2025 年 54 巻 2 号 p. 185-194

詳細
抄録

暗号資産の市場の進展に伴い,パフォーマンス評価のための指数の整備が進んでいるが,こうした指数は現状,時価加重型(CW)のものが中心である.株式の資産クラスでは,過去の実証研究により,最小分散ポートフォリオ(MV)はCWよりもリスク・リターンの効率性で優位である点が指摘されており,これを基に新たな指数の開発が進み,最小分散指数に基づく資産運用は人気のある投資戦略の1つとして定着している.暗号資産クラスでは,伝統的資産のポートフォリオに暗号資産を追加することでの効果検証に関する研究は多数存在するものの,暗号資産クラスの中でのポートフォリオ構築に関する研究は少なく,MVとCWとを比較した研究は筆者の知る限りまだ存在しない.そこで,本研究では,暗号資産市場において,MVとCWのリスク・リターン特性を比較分析した.MVの構築には,Binance取引所の130銘柄の月次リターンデータを使用し,高次元かつサンプル数が限られる状況を考慮して,Oya and Nakatsuma (2022)の改良版ベイズ型グラフィカルLASSOを用いている.2022年から2024年まで3年間の運用実験を実施し,代表的なCWであるS&P Cryptocurrency Broad Digital Market Index(BDM指数)と比較した.その結果,MVはCWに比べリスクを低減しつつ,より高いリターンを達成しており,リスク・リターンの効率性において優位であることが明らかとなった.この結果は,株式市場におけるMVの優位性を示す先行研究と整合し,暗号資産市場においても類似の傾向が存在する可能性を示している.

著者関連情報
© 2025 応用統計学会
前の記事 次の記事
feedback
Top