抄録
3変量X1,X2およびX3に関する3次元正規分布において,X1<x10(一定値)でtruncateした分布における積率,相関係数および回帰係数とtruncateしない元の分布におけるそれらとの関係を求めた.結果は式(3.4)以下の通りである.ギリシャ文字δij,ρij,βijは元の分布のもの,ラテン文字Cij,γij,bijはtruncateされた分布のものを表わし,N0は表1に説明したようにtruncateした比率によってきまる負の定数である,なお国立教育研究所紀要にある数値を借用して末尾に数値例による解説をこころみた.予想していたとおりρ13/γ13はρ23/γ23よりもはるかに大きい.
入学試験成績x1と高校成績x2とのどちらが大学入学後の成績x3と関係がふかいかという議論には,x1でtruncateされた分布での相関係数γ13とγ23の比較よりも元の分布での相関係数ρ13とρ23を比較すべきものであろう.入学試験は数千人の中から数百人を選抜することが多いので標本値をパラメータの近似値として扱えるし,数科目の合計点または平均点は正規分布に近似することが実際上しばしばわれわれの体験することである.したがって本論の利用できる場合も多かろうと信ずる.入学試験以外にも同様な型の現象が少なくないようである.