教授学習心理学研究
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「小数のかけ算」に関する教師の不十分な意味理解と教員養成系学生への援助
麻柄 啓一進藤 聡彦
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2005 年 1 巻 1 号 p. 3-19

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抄録

小学生にとって小数のかけ算の意味を理解することが困難であることは,これまで多くの教師や研究者が報告してきた。そしてその原因としては,小学生がかけ算の意味を同数累加と考えていることが指摘されてきた。われわれは,かけ算についての教師の不適切な理解が児童の困難を引き起こしているのではないかと考えた。研究1では,小学校教師が小数のかけ算の意味をどのように把握しているかを調べた。2つの問題を出題した。1つは,3.2×4.6の計算によって答えを出す文章題を作ることであった。もう1つは,2.7を3.6回足すとはどういうことだろうと考えて分からなくなっている児童に,2.7×3.6の意味を説明するという問題であった。最初の問題では約70パーセントの教師が適切な解答をしたが,第2の問題に関しては16パーセントに留まった。研究IIでは,かけ算の意味を教えるための読み物を作成し,それを用いて教員養成系の学生に教授活動を行った。高い効果が確認されたので,読み物で用いられた教授方針が全体として有効であることが確認された。

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© 2005 日本教授学習心理学会
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