教授学習心理学研究
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授業における学習者の「まとめ」の違いとその後の課題解決の関連
-具体物を用いた算数授業の場合-
佐藤 誠子
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2015 年 11 巻 1 号 p. 28-39

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抄録
授業を創る際、教師は学習目標を設定し、学習者のもつ既有知識や事前の達成状況等を考慮して教材や教授法を選択する。では、設計された教授条件のもとで、学習者は何を理解しどのようなことを知識としてまとめるのか。また、学習目標はいかなる場合に達成されるのか。本研究では、授業において学習者自身が形成する知識の様相を明らかにし、さらに、それが後続の課題解決にどのような影響を及ぼすかを検討した。その際、具体物モデルを用いた面積の授業を取り上げ、学習者が形成した知識の様相として「授業後のまとめ」の内容に着目した。小学6年生29名を対象とした授業の分析を行った結果、①教授者側が数学的概念に焦点化したまとめを提示しても、学習者の理解は授業で扱われた具体物の現象的理解にとどまることがあり、その場合、後続の課題解決が阻害されてしまうこと、②後続の課題解決が促進されるのは、学習者自身が授業で扱った具体物の現象的理解を数学的概念に抽象化し、とりわけ数学的概念と具体物操作を関連づけて理解できたときであることが明らかになった。これらの結果から、教材に対する学習者の理解を把握し、教授法を調整する必要性について論じられた。
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© 2015 日本教授学習心理学会
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