教授学習心理学研究
Online ISSN : 2424-1725
Print ISSN : 1880-0718
ISSN-L : 1880-0718
「参勤交代」に関する授業場面で見られた児童の不十分な認識について
吉國 秀人山内 敏男前田 浩伸
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 13 巻 2 号 p. 103-119

詳細
抄録

本研究の目的は,江戸時代の政治の仕組みのひとつとして参勤交代という制度を捉え直し,1.参勤交代に関する児童の認識の実態を明らかにすること,2.江戸時代の大名行列を描いた巻物教材の提示と予想活動を取り入れた授業が児童の認識に及ぼす影響について示唆を得ることである。 2つの小学校で6年生を対象に行われた授業実践が検討された。巻物教材を提示したいずれの実践においても,「大名行列内には,行列のリーダーとしての大名が,ひとり存在していること」の認識は,児童にとって必ずしも自明のことではないことが示された。さらに,大名がひとりだけであるという事実を教示すだけでは不十分であり,大名行列全体を俯瞰的視点から捉え,大名行列を立派に見せようと工夫したのはどうしてかを問える手がかりを得ることの重要性が論じられた。 最後に,教育心理学研究という位置づけから言語陰蔽効果との関わりが考察され,また実践研究という位置づけからは,幕藩体制についての知識が教師(第一著者)に不足しているという課題が指摘された。

著者関連情報
© 2017 日本教授学習心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top