教授学習心理学研究
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ルールによる課題解決はなぜ困難なのか
―― 「誘導法」によるルール学習研究 ――
工藤 与志文 佐藤 誠子進藤 聡彦
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2021 年 17 巻 1 号 p. 1-16

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抄録
ルールの教授・学習に関する先行研究は,ルールの教授がルールによる課題解決を必ずしも促進しない例を数多く報告してきた。このようなルールによる課題解決の困難さについて,教授されたルールと矛盾する誤ルールを学習者が所持しているためという「誤ルール説」と,例外への懸念などによりルールの一般化可能性を誤って低く見積もってしまうためという「ルール誤解釈説」が提案されてきた。本研究では,適切な課題解決を誘導する発問系列を用意し,その誘導に対する学習者の反応を分析する方法(誘導法)により,従来の説の妥当性を検討した。種子植物の生殖ルールを教授するための文章教材の学習と課題解決を大学生に求め,その後の面接調査において,ルールによる課題解決を誘導する問いかけを行った。誘導の過程における学習者の反応を分析した結果,当初の課題解決で正答しなかった14ケース中,従来の説で解釈可能なものは1ケースのみであり,13ケースでは最終的に正しい解決に到達することができた。これらの結果は誤ルール説やルール誤解釈説と整合しないものであり,むしろルールを課題解決に積極的に使用しない点に問題がある可能性を示唆するものである。
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© 2021 日本教授学習心理学会
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