抄録
同値のルール(p≡q)の適用を促進する方法のひとつとして,ルールを支持しない命題の妥当性が低いことを,ルール命題と対比的に教示していくマトリックス法が提唱されている。しかし,これまでの研究により,「擬似例外」(実際にはルールの例外ではないが,学習者が誤って例外と捉えている現象または事例)が具体的に想起された場合は,マトリックス法の効果が減ぜられることも明らかになっている。本研究では,この問題点への対処法の効果が検討された。2つの実験を通して,これまでのマトリックスによるルールの解説に加え,そのマトリックスを利用して「擬似例外」の正事例化(「擬似例外」が,一見例外のように見えても実はルールの正事例となる理由を説明する手続き)を行うことが,ルール命題の適用範囲の拡大をいっそう促進することが示された。そして,この対処法を含むことで,「擬i似例外」を正事例と見直す傾向が強まる可能性が示唆され,また「擬似例外」がなお想起されている場合でもマトリックス法の有効性が減じられない可能性もあることが示唆された。