2009 年 5 巻 1 号 p. 1-10
異なる2種類の説明的文章を用いて,MRSの活性化における文章依存性の有無を検討した。被験者は,大学生女子63名であり,前期の講義中に材料文(1),後期の講義中に材料文(2)の読解と質問への回答が行われた。結果として,MRSは特定の説明的文章にのみ観察されるものではなく,様々な説明的文章に現れる可能性のあるものであることが確認された。加えて,MRSは特定の読者が一貫して活性化するものというよりは,文章内容によって活性化が生じる場合と生じない場合がある可能性が示された。ただし,MRSの活性化を一貫して生じない読者が存在することが推測される。また,不適切な読解を行った読者と,適切な読解を行った読者との問に,MRS活性化に関して有意な差はなかった。MRSの活性化と深い関わりがある読解として,読者は文中の曖昧な表現を単純化し,著者の主張部分を積極的に読み取っている傾向が示唆された。