教授学習心理学研究
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特別な支援を必要とする児童への「大きい位から足す筆算指導」の実践
吉國 秀人赤沢 潔
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2012 年 8 巻 2 号 p. 88-100

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抄録
本論文は,特別な支援を必要とする児童1名を対象にして,算数学習における2桁及び3桁の足し算学習を,継続的に援助した授業の実践報告である。学習者は,実践開始当時は5年生であった。「かずの学習」における取り組みの中から,特に,2桁及び3桁の筆算による足し算の授業場面を抜粋して報告した。細谷(1969)が小学校算数の授業立案・展開検討で用いた視点を参考にして,実践から導かれる仮設的な要因として 1.課題の型分け,2.教具と課題配列順序,3.個に応じた課題解決のための援助方略に注目し,考察を行った。お金に関する先行知識を有する学習者に対して,その既有知識にあうよう選択された教具(お金)が活用された。また,授業で取り上げた筆算課題は,"特殊な"タイプから"一般的な"タイプの順に配列されていた。さらに,筆算の計算は,初めに大きい位を計算し,その後で小さい位を計算するよう指導した。このような「大きい位優先主義」に即した指導は,2桁及び3桁の足し算を独力で計算可能にし得る指導方法だったことが明らかにされた。「3位数で一の位が繰り上がると十の位も繰り上がる足し算」のタイプの学習が課題として残された。
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© 2012 日本教授学習心理学会
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