抄録
本研究は種子植物の生殖ルール「花が咲く植物にはタネができる」の適用を促す教授法の効果について検討を行うものである。この生殖ルールはカテゴリーの包含関係を表すカテゴリールールとして捉えられるものであるが,学習者にとってルール命題の自発的な変形操作や貝体的な予測の導出が困難であることが先行研究により示唆されてきた。そこで本研究では生殖ルールに加えて「花の形が似ていれば,実やクネの形も似ている」という形ルールを提示することを提案した。形ルールは具体的な花の形と実・タネの形という属性の連合関係を表す属性ルールとして捉えられ,先のような生殖ルールによる処理の困難さを克服させることが期待された。大学生70名を対象に検討を行った結果,形ルールの追加提示は花からタネ,実から花の存在の推論を促すこと,さらには,生殖ルールの逆操作を自発的に行えなかった者でも実から花の存在を推測する逆向き推論を可能にすることが示された。形ルールを提示する有効性は,アブダクション形式の推論を可能にすること,また,生殖ルールよりも具体性を持つ点で学習者にとって理解しやすく使いやすいルールであることにあると考察された。