質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
幼稚園クラス集団における自由遊び時間での「乗り物遊び」
仲間文化の形成と変化
柴坂 寿子倉持 清美
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2017 年 16 巻 1 号 p. 153-173

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抄録
幼稚園の自由遊び時間に一部の子どもたちが開始し,その後クラス集団の子どもたちに伝播し共有されることとなった「乗り物遊び(大型ブロックを用いて乗り物を制作し乗って遊ぶ)」について,仲間文化の形成と変化の視点から検討した。幼稚園クラス集団を入園から卒園の2年間に渡って縦断観察し,「乗り物遊び」が開始される『形成』の過程,クラス集団内に伝播して共有され,繰り返され,やがて減少・終息する『変化』の過程,個人の「乗り物遊び」への参加について分析した。「乗り物遊び」は対象クラスにおいて年長5月に一度出現したが継続されず,その後3名の男児によって年長7月に再開された。「乗り物遊び」はそこから男児に広がり,さらに女児にも広がった。年長9 ~ 10月のピークの後,大幅に減少し,年長2月には終息した。「乗り物遊び」の形成と変化においては,遊びの知覚属性(観察可能性,両立可能性,試行可能性),園生活の文脈(クラス集団内の仲間関係と集団構造,園の物理的環境と社会文化的環境,自由遊び時間での遊びの状況),保育者の関わりの影響が示唆された。個々の子どもは「乗り物遊び」の形成と変化へ多様な関与をしていること,「乗り物遊び」が個々の子どもにとって多様な意味をもつことが示唆された。「乗り物遊び」はクラス集団と個人に重要な帰結をもたらしたことも示唆された。
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© 2017 日本質的心理学会
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