抄録
インタビュイーの中には豊かで巧みな表現を行えるインタビュイーもいれば,あまり話さないインタビュイーも
いる。有名な質的研究には,そのフィールドに熟知しているというだけではなく,研究者が引用したいと思うよ
うな多くの点を話すことのできる人が関わっていることが多い。そこで,質的研究にとって重要な情報とはどの
ような情報なのかを明らかにするために,本研究では学会賞を受賞した 4 つの質的研究を対象に分析を行った。
ほぼすべての引用にラベルを付けたところ,それらのラベルからは 6 つのカテゴリの存在が明らかになった。そ
れは,「体験の具体的な説明」「自分(たち)なりの理解,解釈,意味づけ」「問題に直面した場面における自分
(たち)なりの対処」「俯瞰的説明」「異なる時間についての見解」「現実とずれるインタビュイー」である。これ
らに基づき,「良いインタビュイー」の特徴と,質的研究の根拠の構造について議論した。