質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
18 巻 , 1 号
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  • 在日コリアンと日本人の「分断から動き出す交流」
    朴 希沙
    2019 年 18 巻 1 号 p. 7-25
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究の目的は,在日コリアン(以下,在日)の悩みに当事者研究を用いてアプローチするグループ「それが一 人のためだとしても」において在日及び日本人参加者に生じた体験のプロセス,そしてその体験を促した場の特 徴を,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M–GTA)を用いて分析し,在日に対する心理社会的支 援に示唆を与える実践知をつくりだすことにある。まず分析の結果,以下の3 点が明らかとなった。それは①在 日参加者の「大きな(社会歴史的な)物語」と「小さな(個人的な)物語」が統合されていく過程,②日本人参 加者が在日参加者という具体的な「他者」に出会いその問いかけに応えることにより変化していく過程,③それ らの変化を可能にしている場の性質である。また本分析の結果から,在日と日本人の対話において重要と思われ る3 つのコア概念を得ることができた。それは①人種に関する経験に対して意識的であること,②苦闘する生に 対する敬意,③応答しあう関係としての対話である。そこで総合考察では試論的に上記3 点を骨子とした新しい 対話実践「Respectful Racial Dialogue」を提案する。本研究は非常に限られたフィールドを対象にしているが,そ こにおける実践は,今後の在日のための心理社会的支援において,そして在日と日本人との対話において重要な 役割を果たす可能性を秘めていると考えた。
  • ウェンガーの「非公式の」実践共同体概念を手がかりとして
    山下 愛実
    2019 年 18 巻 1 号 p. 26-40
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究の目的は,保育の場においてやるべき公式の活動の最中に,子どもたちが即興的に創り出す「あいま」の 持つ意味を明らかにすることである。幼稚園 3 歳児クラスでの 1 年間の観察を行い,ウェンガーの「隙間に生じ る実践共同体」の概念を理論的枠組みとして,収集した事例を分析した。その結果,子どもたちはやるべき公式 の活動を知りつつも,その活動や環境の中で自らの関心に沿って多様なリソースに自由にアクセスしながら,そ の実践を共有することで「あいま」を創出していた。「あいま」は非公式の実践とやるべき公式の活動がつねに 相互に影響することで創り出されていた。さらに「あいま」を創り出す実践では,遊び心に満ちていた点がすべ ての事例に共通していた。保育の場において子どもたちが創り出す「あいま」について,従来はやるべき公式の 活動からはずれるゆえに「逸脱」とネガティブに捉えられていたが,本研究によって子どもたちがより生き生き とした幼稚園での生活をいとなむことにつながる意味を持つことが見出された。
  • 危機に直面した企業組織でのフィールドワークから見えてきたもの
    小林 惠子
    2019 年 18 巻 1 号 p. 41-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究の目的は,経営危機に直面した企業におけるエスノグラフィーをもとに,後ろ向きの越境の実際を検討す ることにより,これまでの研究では論じられなかった種類の越境について議論することである。創立100 年を超 える老舗の企業組織が,急成長を遂げた外資企業に買収されて傘下に入った。現在も再建中である当該企業は, 業績回復を目指し,かつて危機を救ってきた伝統的な販売強化活動を再開する。そこに業績の芳しくない事業部 から,部署や役割を越えて参加した人たちが一時的に組織化された越境チーム(BATOM)に集められた。彼ら は未経験の活動に戸惑いながらも集中的に販売活動に参加する。彼らの実践からは,厳しい目標達成のための悲 壮感や不安だけではなく,意味を明確に問わないまま続ける儀式や暗黙の前提で進める実践がみられた。また, 彼らの周辺で活動の支援を担う推進チームや,筆者を含むその他の支援者たちとの間には, 多様な境界が生成さ れており,そこかしこで越境的実践が創り出されていることが明らかになった。
  • 岡部 大介, 大谷 紀子
    2019 年 18 巻 1 号 p. 61-75
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究は,人工知能技術を適用した自動作曲システムと,アーティスト,および人工知能研究者による,各々が異質性をいかして楽曲を創作する活動の実践研究である。彼らによる協働的な楽曲制作場面を組織し,そこで観察されたコミュニケーションやインタビューデータを分析対象とする。人工知能を取り入れた自動作曲システムを加えて創作することで,どのような活動が行われるのかを検討することが目的である。観察データとインタビューデータをカテゴリ化した結果,「省察を触発する人工知能技術」「ブリコラージュの底上げ」「人工知能技術との協働における制約」という3 つの大カテゴリが得られた。本実践で用いた人工知能技術との協働的な活動は,アーティストの創造性の資源を底上げし,創作に関する省察の機会と幅を広げることを支援すると考えられる。創作や創造的な活動のプロセスは,制作を通した外化とその省察のサイクルからなる。これらは,人間どうしのネットワークにおいては,コミュニケーションを通して日常的に行われる機会が多い。このネットワークに人工知能技術が加わると,その省察の質が変化することが示された。
  • ウガンダに暮らす南スーダン難民の相互扶助組織を事例として
    橋本 栄莉
    2019 年 18 巻 1 号 p. 76-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本論の目的は,ウガンダ共和国に暮らす南スーダン共和国からの紛争難民の実践を事例として,難民間の相互扶 助組織の動態を明らかにするとともに,これらの組織が,いかにして難民となった人々が直面する問題に対処し, 国家や民族といった既存の境界や領域性と向き合っているのかを検討することにある。本論では,ナイル系農牧民ヌエル(Nuer)によって構成される相互扶助組織をはじめとする難民らによって主体的に構成される組織に着目する。主として取り上げられるヌエルの相互扶助組織では,難民定住区で生じるさまざまな位相の問題に対処するために,伝統的リーダーシップや近代的行政システムを組織に組み込みながら,戦略的に集団内の共同性を操作・維持し,対立の中の融合を目指していることが明らかとなった。ただし,問題解決型の組織であるヌエルの相互扶助は複数の境界や領域性にうまく対処する一方で,「民族」という境界を強化し,他者を排斥する傾向を備えている。この問題点を乗り越える可能性として,本論の最後では,さまざまな境界を曖昧化しながら「問題」をパフォーマンスするという新たな共同性やコミュニティ構築の方法を提示する演劇サークルの取り組みを紹介する。以上を通して,本論では,「難民」という状態が,いかに人々が他者や境界と生きる場を形成していくのかを描きだす。
  • 正統的周辺参加論による関係的アプローチの課題克服可能性とその意義
    最上 雄太, 阿部 廣二
    2019 年 18 巻 1 号 p. 95-115
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本論文の目的は,社会的過程に着眼する関係的アプローチの理論的課題を指摘し,その問題を解決するひとつの可能性として,正統的周辺参加論の視座に立ったリーダーシップ研究の方法論的提案を行うことにある。本論文は,まずリーダーシップ研究の理論的変遷を概観し,関係的アプローチの理論的課題を指摘した。理論的課題とは,第一に社会的過程を捉えるための方法論的議論が不足していること,第二にそうした方法論に社会と個人両方の位相を含む必要があることである。次にその問題を解決する方略を探索し,個人と社会の再帰的関係に着目する再帰的アプローチとして,バトラーおよびケミスとマクタガートの議論をとりあげた。その後そうした再帰的アプローチの具体的な研究の方法的視座として,状況的認知のアプローチのひとつである正統的周辺参加論(legitimate peripheral participation: LPP)をとりあげた。以上をふまえて,LPP の視座を用いた再帰的リーダーシップ研究による方法論を提案し,関係的アプローチのひとつの展開可能性を示した。最後に,本特集の「ネットワーク」という観点における,「個人」という位相の位置づけについて議論した。
  • 仏レストランのマネジメントから
    會津 律治
    2019 年 18 巻 1 号 p. 116-123
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    客と店との関係は,経済的なマクロの視点においては共存共栄の二つのコミュニティを形成しているとみなされ る。しかしレストランマネジメントにおけるミクロな視点では提案側と選択側であり,利益は背反し,目的は異 なる。本研究では,あるフランス料理レストランを対象に参与観察を行い,客による逸脱行動の発生場面を分析 した。その結果,対象レストランには従来のフランス料理レストランから逸脱した規範が多く設定されており, これに客を従わせることが,客による逸脱行動に関わっていると考えられた。また,店側は客の逸脱行為によっ て初めて店の規範に直面させられていることも示された。客と店がその時の状況に依存しながら相互作用し,結 果としてレストランの規範が揺らぎ,新規範が生成されていたこのプロセスは,客と店という目的の異なる二つ のコミュニティが,店という越境的な空間の中で交渉しながら規範を創り変える,集合的な学習の場面であった と考える。
  • 新潟県小千谷市塩しお谷だに集落・復興10年のアクションリサーチから
    山口 洋典, 渥美 公秀, 関 嘉寛
    2019 年 18 巻 1 号 p. 124-142
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究は,10 年にわたる災害復興のアクションリサーチを通じて,メタファーが当事者と外部支援者の越境的 対話を促進することを明らかにした。理論的観点としては特に語用論をもとに,実践及び研究のモードが移行す ることをメタファーの越境機能として位置づけた。2004 年の新潟県中越地震からの復興過程のアクションリサー チでは特に二つのメタファーが越境的対話を促進した。現地再建を希望した住民と断念した住民との間では,種 蒔きのメタファーが機能して,地域間交流の拠点の整備と活用がなされた。現地再建を決断した住民と外部支援 者の間では,学校のメタファーが機能して,被災経験の有無を越えて地域間交流が展開された。これらの動態に ついて,先行研究をもとに,復興過程に見られるメタファーの動態を6 段階の越境過程と照らし合わせた。その 際,メタファーを使用者ではなく解釈者の視点から取り扱ったところ,メタファーは越境的対話の現場において, まず活動の儀礼化をもたらし,続いて定式化が図られ,結果として言葉が生きることにより継続的な越境が前提 となることが明らかとなった。以上の議論をもとに,地域社会において人間関係が発展する可能性を高めようと する研究者の支援のあり方として,その場限りで「受ける言葉」ではなく,長きにわたり「響く言葉」を探求し 導入することを提案した。
  • 男女のいずれかというわけではない性自認をもつ人々の語りから
    山田 苑幹
    2019 年 18 巻 1 号 p. 144-160
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究は,性別違和を抱く人々が自身の性自認をどのように生きているのかについて質的に検討し,ジェンダー・アイデンティティ研究に新たな知見をもたらすことを目的に,男女のいずれかというわけではない性自認をもつX ジェンダー当事者2 名(S さん,K さん)にインタビュー調査を行った。得られた語りは,ナラティヴ分析の一つであるテーマ分析の観点から,語りの内容に注目して(1)性別違和の体験,(2)X ジェンダー概念に対する考え,について整理した。本研究の結果から,X ジェンダー当事者が,自身の性自認とどのように向き合いながらジェンダー・アイデンティティを形成し,X ジェンダー概念をどのように捉えて使用しているのかが浮かび上がった。考察では,S さんとK さんの語りの特徴を先行研究に照らし合わせて整理することで,性別違和を生きる上で重要と思われる点や,X ジェンダー概念がもつ特徴を検討し,X ジェンダーという概念の可能性と限界を浮かび上がらせた。
  • 小泉 千尋
    2019 年 18 巻 1 号 p. 161-175
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    近年,科学技術を巡って専門家と市民の対話の重要性が高まっている。本研究は,そうした対話の場の一つであるサイエンスカフェをフィールドとし,話題提供者と呼ばれる専門家が一般参加者の「科学知では答えられない/答えにくい問い」にどのように対処するのかを検討した。その結果,話題提供者は科学知において答えられる範囲については科学知フレームで応答し,答えられない/答えにくい範囲については社会的議論フレームへと移行した。ところが,社会的議論フレームへの移行が参加者とのコンフリクトを生じさせると,ファシリテーターの介入を契機として,個人見解フレームへと移行していた。こうした話題提供者のフレームシフトは,参加者との対立を回避し,コミュニケーションを継続するためのストラテジーであるといえる。この結果から,話題提供者がフレームシフトを用いて自らのメンバーシップを「話題提供者」から「一参加者」としてその場に参加していた可能性を示唆した。
  • インターネット上の相談事例に基づく当事者視点の研究
    渡辺 恒夫
    2019 年 18 巻 1 号 p. 176-196
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    コミュニケーションが極めて重視される社会にあって,「コミュ障」を抱えた者はいかに生きたらよいかを当事 者視点で問うために,「人づきあいが苦手」で検索したインターネット上の相談事例4 例を,ラングドリッジの 批判的ナラティヴ分析(CNA)を元に考案した批判的ナラティヴ現象学によって分析した。その結果,1 例で,多数のアドヴァイス・ナラティヴとの「地平融合」を通し,自己の問題が対人関係過敏に由来する対人回避にあるという自己洞察を得たことが分析された。職場の困難を抱えた他の例をも含めると,「要求水準を下げて対人ストレスの少ない環境を選び,何かに没頭することを通じて対人刺激に知らず知らずのうちに慣れてゆき,気がついたら居場所を何とか確保していた」という方向の自己経験に基づくアドヴァイスが優勢だったが,これは著者自身が身に着けた無意識裡の秘訣でもあったというように,当事者視点からの暗黙の参照点を介して「本質観取」がなされた。医療・マスメディアで話題の自閉性スペクトラム障害(ASD)圏の,共感性の遅れを伴う「コミュ障」と,これらネット上のコミュ障との異質性も示唆され,後者の理解にはユング派の通俗心理学的概念であるHSP(敏感すぎる人)が参考になるとされた。ASD 圏に対して提唱されている医療化・福祉化とは別の解決法の必要性が説かれ,異質なものの「共生」という福祉社会論の理念にも疑問が投げかけられた。
  • GTAによる分析
    長友 隆志
    2019 年 18 巻 1 号 p. 197-216
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
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    本研究は生徒の英作文活動において,英作文指導におけるフィードバックの効果について,実際の授業実践にもとづいて検討したものである。管見では,現場の教師の英作文におけるフィードバックは英作文のみ,特に文法のみの指導に焦点が当てることが多く見受けられ,私もその1 人であった。しかしながら,生徒の英語能力は,英作文自体の指導のみならず,生徒の英作文に対する,心理面,認知面からの指導によっても改善できる可能性がある。本研究では,生徒のライティング活動において,自己効力感,メタ認知,そしてライティング方略の3 点について教師のフィードバックによりどのように変化するのか実践にもとづいて検討した。研究方法として,生徒からの振り返りの記録を学習ジャーナルとして記録し,その記録をGTA を用いて分析をした。実践では,英作文の指導の際,メタ認知の向上を図るために,エラーコードを用いた。さらに,励ましのコメントを用いることで,生徒の自己効力感を高めるよう意識した。結果として,生徒は,自己効力感とメタ認知を向上させながら,振り返りなどのライティング方略を使用するようになった。
  • 成人期における将来展望との関連に着目して
    石井 悠
    2019 年 18 巻 1 号 p. 217-241
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル 認証あり
    小児期に重篤な疾患を経験しても,成人し,その後も長く生きられる確率が大幅に上がってきていることに伴い,成人した経験者の一部が心理社会的な問題を抱えていることも報告され始めている。このような問題は,特に看護や医療の分野で注目されてきたが,そもそもの問題の発生機序の解明に向けた心理学的な実証研究が急務である。この問題の解決に向け,本研究では,小児期に経験するイルネス・アンサーテンティ(IU)の生涯発達的な影響に着目し,小児慢性疾患経験者が経験したIU が,成人期前期時点での将来展望とどのように関連する可能性があるのかを探索的に,質的に明らかにすることを目的とした。具体的には,政府の定める小児慢性特定疾患治療事業の対象となる程度の重度の疾患を経験し,現在成人期前期にある男女5 人を対象にインタビュー調査を行い,彼らのIU についての語りと,現在抱いている将来の展望についての語りの関係性を明らかにすることを目指した。分析の結果,今回語られたIU は必ずしも研究開始当初に想定していたものだけではなく,例えば「情報」がIU の増減に与える影響など,IU の新たな側面が明らかになった。この理由により今回の結果から結論づけることはできないが,IU の中でも特に症状や病気,治療の時間的な見通しに関わるものと,病気の社会的な意味に関するものが,ゆくゆくの将来展望に影響する可能性が示唆された。
  • ある転職体験
    五十嵐 茂
    2019 年 18 巻 1 号 p. 242-262
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル 認証あり
    自己エスノグラフィは,個人的な生の経験が,自分自身の思考,感情,内面の葛藤を含む形で記述される。そこ にはその解釈を助ける理論や文化が組み込まれる。本稿において分析されるのは,編集者として活動してきた著 者が,印刷会社に転職した経験の中で起きた出来事である。その職場で二種類の時間と直面する。それは,出版 社における編集者の仕事を支配する能動的企画的な時間と印刷会社におけるマンアワーコストという企業原理が 支配する時間という,二つの異質な時間であった。そこにおいて,筆者の編集者としてのキャリアは激しく揺さ ぶられる。その経験を分析し,自己のまとめ上げにかかわる二つの感覚の対抗と葛藤を取り出す。リクールは, 物語において意味を生み出す過程を統合形象化として分析した。それは単なる出来事の羅列から,一つの物語を 作り出す意味の取り出しである。彼が分析した「意味論的空間」と呼ばれるそれは物語の成立を左右する。自己 物語においてその空間を生み出すのは,自己のまとめ上げによって生み出される〈まとまりある自己〉である。 そしてそれが生み出す意味は,現実の社会関係におけるポリティクスの渦に巻き込まれる。そこで生まれる〈自 己まとまりの崩されと回復〉が,自己エスノグラフィのドラマを生み出す。そこに働いているのは〈意味の崩さ れと回復〉の文脈である。
  • 荒川 歩, 白井 美穂, 松尾 智康, 加藤 賢大
    2019 年 18 巻 1 号 p. 263-273
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル 認証あり
    インタビュイーの中には豊かで巧みな表現を行えるインタビュイーもいれば,あまり話さないインタビュイーも いる。有名な質的研究には,そのフィールドに熟知しているというだけではなく,研究者が引用したいと思うよ うな多くの点を話すことのできる人が関わっていることが多い。そこで,質的研究にとって重要な情報とはどの ような情報なのかを明らかにするために,本研究では学会賞を受賞した 4 つの質的研究を対象に分析を行った。 ほぼすべての引用にラベルを付けたところ,それらのラベルからは 6 つのカテゴリの存在が明らかになった。そ れは,「体験の具体的な説明」「自分(たち)なりの理解,解釈,意味づけ」「問題に直面した場面における自分 (たち)なりの対処」「俯瞰的説明」「異なる時間についての見解」「現実とずれるインタビュイー」である。これ らに基づき,「良いインタビュイー」の特徴と,質的研究の根拠の構造について議論した。
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