抄録
本研究は,園において泣きの多かった子どもを対象に,園における個人史を記述し,園生活を経ることによる変容を明らかにしようとする。入園から転出までの1 年について,対象児の泣き事例の分析,泣きに関連する項目のコーディング,しばしば泣きの原因となった子どもとの関係の分析を行った。泣きの多さの背景は1 年の前半と後半で大きく異なっていた。前半の泣きは環境移行に伴い,新奇な場面に直面したゆえの泣きと思われ,こうした泣きは次第に減少した。後半では一人の男児とのアンビバレントな関係が泣きの背景にあることが示唆された。こうした事例に基づき,子ども達の個人史における園生活の意味について考察した。