質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
現代日本の司書・図書館関係者におけるネットワークと創造性
石田 喜美
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2021 年 20 巻 Special 号 p. S9-S15

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抄録

本稿では,変化しつつある現代日本の図書館と,司書・図書館関係者の姿について現場報告を行う。本稿では特に, アナログからデジタルへとその重点を移行させつつある世界的動向の中,図書館界において注目されている2つのキーワード─「ネットワーク」と「創造性」─に着目し,日本のローカリティにおけるこれらの現れを描出することをねらいとした。はじめに,日本十進分類法擬人化普及委員会や「としょけっと」を例に,公的なネットワークとは異なる場で生起しつつある,新たな草の根的ネットワークの存在を示した。次に,未知なる状況を創り出す「ゲーム」という媒体に着目し,それを調査ツールとして用いた実践での司書・図書館関係者のゲームプレイ上の会話の記述から,そこに見られる創造性の姿を記述した。最後に,司書・図書館関係者が彼らの草の根的ネットワークの中で行う創作活動とゲームプレイ中に見られた創造性とがグラデュエーション状に位置すること,そのどちらもが既存のリソースや環境への応答として生み出されていることを指摘した。その上で,エンゲストロームが提起した「菌根」の概念を援用し,司書・図書館関係者のネットワークや創造性が図書館内外に繁殖する「菌根」に根ざしたものであると考察した。

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© 2021 日本質的心理学会
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