抄録
多くの青年期研究者にとっては,自己は自明の存在であることが多かった。それ故に彼らは,自己がどのように発現し,それが問題化,テーマ化されるのか,という自己の発現過程にほとんど関心をもたなかった。本稿は,大学生への自己形成教育である,京都大学と慶應義塾大学との合同ゼミKKJ 実践をフィールドとして,そこで見られた学生の学習経験から,自己の発現過程を検討することを目的とした。その結果,(1)自己は対峙する他者に応じて発現すること,(2)その他者は,同一性の場である個人の経験総体を差異化する侵入者となる限りにおいて,自己を発現させることが明らかにされた。