質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
日米国際結婚夫婦の妻におけるアメリカ文化に対する同一視
矢吹 理恵
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2004 年 3 巻 1 号 p. 94-111

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抄録

昨今の発達心理学における「結婚」・「夫婦」研究の発展にはめざましいものがあるが,本研究は国際結婚夫婦に焦点を当てることで「結婚」を「夫婦の文化折衝の場」としてとらえ直そうという試みである。在日の夫アメリカ人・妻日本人夫婦20 組に質問紙および面接調査を行い,結婚を通じた夫婦の文化化(acculturation)の過程で生起する,日本人妻によるアメリカ文化への「同一視」の形態とその形成のプロセスを検討した。その結果,妻が形成するアメリカ文化への「同一視」には二つの流れがあることがわかった。家庭内の文化実践(cultural practice)を妻が主導している夫婦の場合は,妻が結婚前に形成したアメリカ文化への「同一視」が,結婚後の家庭内文化実践の文化的志向性に反映されていた。他方,家庭内の文化実践を夫が主導している夫婦の場合は,妻は結婚後に第一段階で夫そのものに「同一視」し,その後に夫の文化的志向性を受け入れるかたちでアメリカ文化への「同一視」が形成されていた。

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© 2004 日本質的心理学会
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