質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
保育者の持つ“良い保育者”イメージに関する ビジュアルエスノグラフィー
野口 隆子小田 豊芦田 宏門田 理世鈴木 正敏秋田 喜代美
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2005 年 4 巻 1 号 p. 152-164

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抄録
本研究の目的は,ビジュアルエスノグラフィーの手法を援用し保育者が暗黙的にもっている“良い保育者”イメージを明らかにすることである。幼稚園のままごと・砂遊び・トランポリン・製作という4 つの活動からなるビデオクリップを作成し,計143 名の保育者に提示し保育者の持つ価値観の言語化を試みた。ビデオクリップに対する保育者のコメントは修正版グラウンデッドセオリーアプローチによって質的に分析した。すると,“良い保育者”イメージは『子ども中心』志向と密接に結びついている。その他『子ども理解』,『子どもの活動を発展させる』,『仲間作り』,『適切な環境の構成』などのカテゴリーが分析のプロセスから浮きあがってきた。主として次のような事が示唆された。1)保育経験による“良い保育者”イメージの差はみられない。2)『子ども中心』志向が“良い保育者”と結びつく一方,『保育者中心』志向は“良くない保育者”とみなされる傾向がある。3)ビデオは視覚的情報を多くもつため,見る者に与える印象は強い。しかし,不可視的な背景の情報とその解釈にどれぐらい開かれているかが,ビデオの見方として課題となるだろう。より良い保育者イメージとその実践について,そして保育現場におけるビデオ利用の効果と可能性について今後さらなる研究が求められる。
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© 2005 日本質的心理学会
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