2005 年 4 巻 1 号 p. 136-151
本研究は,ダイナミックタッチの恒常性現象についての再理解を目的とし,これまでの伝統的な研究のアプローチ及び現在の生態心理学での検討が不十分であることを問題として指摘した。方法論として,従来の精神物理学の定量的な方法に加えて,実験現象学の質的なアプローチが必要になること,分析方法にも改良の余地があることなどを議論した。ダイナミックタッチによる棒の長さ知覚課題を設定し,課題では試行内で棒の振り方を変えて長さを報告させた。振り方変更時に感じられる感触の変化を被験者に言語報告させ,それらを質的分析の対象とした。質的分析の結果は,定量的アプローチでは明らかにされなかった長さ知覚の違いを顕在化させた。振り方が知覚に与える影響を除去するのではなく,質的アプローチと量的アプローチとを総合させてダイナミックタッチの恒常性を理解する必要性が議論された。