質的心理学を開拓してきた,世代,専門,性を異にする二人の研究者が,自分自身の長年の研究の「来し方」をふまえて,今後の質的心理学の「行方」,研究の方向性や問題点について対談した。おもな対談内容は,以下のようであった。 1)複雑多岐の要因が連関するフィールドワークと質的研究との深い関係性。2)質的心理学の理論的・方法的位置づけ を明確にし,発表の場をつくっていく必要性。3)研究者だけではなく相手にとっても重要なテーマを研究することと相手の琴線にふれるインタビューを行うための事例の積重ね。4)イーミックな視点の重要性と,他の視点との交差の必要性。5)対象者の主体性と事例の匿名性への疑問。6)旅日記的な事例記述に終わらず,一般化できる研究へ向かう方略。