質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
引退後のプロ野球選手にみる自己物語
プロ野球選手役割に執着しないための語り
篠田 潤子
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 5 巻 1 号 p. 217-234

詳細
抄録
本論文は引退後の進路が白紙であった 2 人の元プロ野球選手の語りから,どのように彼らが引退を語るのか,その類型を明らかにした。面接で得た彼らの語りは,引退から 5 年間が経過した元選手の自己物語である。分析の結果,①プロ野球選手になるまでが克明に語られ,現役時代については,ほとんど語られなかった。②「プロ野球選手になりたいわけではなかったが,他者の決断に依存して,なってしまった」と語られた。③「今振り返ると,過去に起きたこと,思ったことはすべてよかった」と繰り返し語られた。これらの点から,彼らの自己物語は,プロ野球選手という役割への執着(Role Residual: Ebaugh, 1988)を断ち切るための語りであることが明らかになった。
著者関連情報
© 2006 日本質的心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top