第四紀研究
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原著論文
新富士火山の噴火活動に伴う上井出扇状地の発達史
田島 靖久宮地 直道井上 公夫
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2006 年 45 巻 4 号 p. 287-301

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抄録

日本最大の活火山である富士火山には, 山麓部に複数の扇状地が分布する. 本論では, 富士火山の西側に位置する上井出扇状地について, その形成過程を解明した. 上井出扇状地は堆積物の構成物質や地形より, その形成時期をYFM-K1~K3期の3時期に区分できる. このうち, YFM-K1期 (cal BC 3,400~2,100) は中期溶岩の噴出時期にあたり, cal BC 2,500頃には到達距離の長い岩樋火砕流が発生した. YFM-K2期 (cal BC 1,500~1,000) は, 比較的規模の大きな降下テフラや火砕流が噴出するとともに, 御殿場岩屑なだれと近接した時期に107m3オーダーの規模の大きな猪の窪ラハール-Aが発生した. YFM-K3期 (cal BC 800~AD 300) は, 湯船第2スコリア (Yu-2) をはじめとする山頂火口に由来する降下テフラの噴出時期に対応し, これらに伴うラハールが発生した.
マグマ噴出率の変化と, cal BC 3,400以降の上井出扇状地における土砂堆積量の変化傾向は, おおむね一致していることが判明した. 上井出扇状地のYFM-K1期の場合, 大規模な降下テフラの発生が少なく, このため山体近傍に堆積する溶岩の供給量の変化は, 扇状地での堆積量の変化に大きく影響を与えていると考えられる. YFM-K2期については, 107m3オーダーのラハールが短時間に流出する現象が扇状地の形成に関与していた.

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© 2006 日本第四紀学会
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