第四紀研究
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45 巻, 4 号
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原著論文
  • ―反射法地震探査からのアプローチ―
    宮内 崇裕, 三縄 岳大, 伊藤 谷生, 加藤 一, 河村 知徳, 井川 猛, 浅尾 一己
    2006 年 45 巻 4 号 p. 263-274
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    地溝は, 縦ずれ断層によって形成された地形的凹地として, 地質学的に定義されるものである. 房総半島南部には, 地形学的にも地質学的にも十分な検証がなされないまま, 地溝の典型として“鴨川地溝帯”という名称が使用されてきた. 地形学的・地質学的資料に反射法地震探査法を適用して, それが地溝かどうか?について再検討を行い, 房総半島南部の地形が構造運動によるものではなく, 組織地形として成立してきた可能性について考察した. その結果, 反射法探査イメージには地溝の地質構造がみえないこと, これまで活断層とされてきたリニアメントに沿って累積的な変位や沈降がみられないことから, いわゆる鴨川地溝帯の実体はないことが判明した. 上総丘陵と安房丘陵の間にある, みかけの凹地を画する2つのリニアメントは, 断層線谷や逆従断層線崖などの組織地形の様相を示す. 北側のリニアメントに沿っては, そのような侵食地形が破砕した保田層群の頁岩と三浦層群の泥岩の接触部に発達する. 南側のリニアメントでは, その地表トレースは曽呂川断層と一致し, 断層を境にして接する保田層群の頁岩同士, あるいは頁岩・砂泥岩との接触部に沿って, 侵食地形が連続する. これらは, 差別侵食がそのような場所に発生し, 岩石における抵抗性の違いに由来する地溝状の凹地を生み出したことを示唆している. とくに, 風化の著しい頁岩部における選択的侵食低下が著しい. 推定される古水系や逆従断層線崖の存在に基づくと, かつて現在の嶺岡山地をおおう山地が存在し, その斜面上に必従河川の水系が発達していたと考えられる. このように, 房総半島南部の地形は, 地質構造や岩石 (地層) の性状に大きくに影響を受けた組織地形として成立してきたものであり, 鴨川地溝帯とされてきた地形は地溝ではなく, 組織地形の一部と考えられる.
  • 佐々木 俊法, 須貝 俊彦, 柳田 誠, 守田 益宗, 古澤 明, 藤原 治, 守屋 俊文, 中川 毅, 宮城 豊彦
    2006 年 45 巻 4 号 p. 275-286
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    土岐面頂部付近の閉塞された小盆地で掘削されたボーリングコア (OK1コア : 深度25.3m) は, おもに泥炭層と無機質粘土~シルト層のリズミカルな互層からなり, コア下部から約30万年前に堆積した高山Ng1テフラが検出された. この約30万年前以降の連続試料について, テフラ分析, 帯磁率測定, 粒度分析, 色相計測, 花粉分析を実施した. 花粉分析のデータを基に, モダンアナログ法を適用し, 古気温の変動を復元した結果, 海洋酸素同位体の変動と同調していることが明らかになった. さらに, 暗色の泥炭層と明色の無機質粘土~シルト層の堆積環境がリズミカルに振幅し, それを数値化したL*値の変動が日射量変動に対応している可能性が示された. これらのことから, OK1コアは盆地内のローカルな環境変動のみならず, 過去30万年間以上にわたって汎地球的な変動をも連続的に記録していると推察される.
  • 田島 靖久, 宮地 直道, 井上 公夫
    2006 年 45 巻 4 号 p. 287-301
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    日本最大の活火山である富士火山には, 山麓部に複数の扇状地が分布する. 本論では, 富士火山の西側に位置する上井出扇状地について, その形成過程を解明した. 上井出扇状地は堆積物の構成物質や地形より, その形成時期をYFM-K1~K3期の3時期に区分できる. このうち, YFM-K1期 (cal BC 3,400~2,100) は中期溶岩の噴出時期にあたり, cal BC 2,500頃には到達距離の長い岩樋火砕流が発生した. YFM-K2期 (cal BC 1,500~1,000) は, 比較的規模の大きな降下テフラや火砕流が噴出するとともに, 御殿場岩屑なだれと近接した時期に107m3オーダーの規模の大きな猪の窪ラハール-Aが発生した. YFM-K3期 (cal BC 800~AD 300) は, 湯船第2スコリア (Yu-2) をはじめとする山頂火口に由来する降下テフラの噴出時期に対応し, これらに伴うラハールが発生した.
    マグマ噴出率の変化と, cal BC 3,400以降の上井出扇状地における土砂堆積量の変化傾向は, おおむね一致していることが判明した. 上井出扇状地のYFM-K1期の場合, 大規模な降下テフラの発生が少なく, このため山体近傍に堆積する溶岩の供給量の変化は, 扇状地での堆積量の変化に大きく影響を与えていると考えられる. YFM-K2期については, 107m3オーダーのラハールが短時間に流出する現象が扇状地の形成に関与していた.
短報
  • 井上 弦, 長岡 信治, 杉山 真二
    2006 年 45 巻 4 号 p. 303-311
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    長崎県島原半島南東部において, 姶良Tnテフラ (AT) を挾在して累積する黒ボク土を見出し, その成因について検討した. その結果, 島原半島南東部の黒ボク土は, 雲仙火山の山体周辺の裸地からの風成堆積物, および雲仙火山から直接噴火・堆積した細粒なテフラを主母材にしたと考えられた. 島原半島南東部の黒ボク土は, 少なくとも姶良Tnテフラ堆積以前から生成していたと考えられる. また黒ボク土は, 最終氷期後半の寒冷期においても, ミヤコザサ節などの草本植生を有機物の主体として生成した. すなわち, 有機物と火山噴出物の供給のバランスにおいて, 寒冷な時期にあっても有機物の供給が優勢な条件により, 黒ボク土の生成が継続したと考えられる.
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