大都市圏では膨大なボーリングデータ・土質試験データが蓄積されてきている.これらのデータは,地質構造の復元および堆積物物性の評価を試みる研究者にとってきわめて魅力的に映る.しかし,それらがどの程度活用できるのかについては,充分に明らかにされてきたとは言い難い.そこで,堆積環境が明らかにされつつある関東平野南部および濃尾平野湾岸域において,高精度で測定されたS波速度(Vs)データを収集し,それを外的指標として同一深度で実施された原位置試験,土質試験データと比較した.
その結果,Vsが層相および堆積環境の評価指標として有用であること,さらに土質試験データの信頼性・品質の評価にも利用できることがわかった.一方,標準貫入試験で得られるN値はばらつきが大きく,堆積物物性の対比指標としては慎重に使用すべきである.また,含水比や間隙比など変数間の比で定義される物性値も適当ではない.これに対し,含水率や湿潤密度,固相体積率(間隙率の補数)はVs値ともよい相関性を示し,堆積環境指標として有用な物性情報であるということができる.