第四紀研究
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論説
兵庫県円山川下流域における沖積層の層序・堆積環境と完新世の相対的海水準変動
谷川 晃一朗
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2009 年 48 巻 4 号 p. 255-270

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抄録

兵庫県円山川下流域(豊岡盆地)における沖積層層序,海水準変動および海岸線の変化を復元するために,ボーリングコア試料の地質層序データの解析と,コア堆積物試料のイオウ含有量,火山灰,珪藻化石および貝化石の分析,14C年代測定を行った.円山川下流域の沖積層は,下位から下部砂礫層(LG),下部砂泥層(LS),中部泥層(MM),上部砂層(US),最上部泥層(UM)に区分することができ,海成層と考えられる中部泥層が豊岡盆地全域にわたり分布している.鬱陵隠岐火山灰(U-Oki)が降下した約10,700 cal BPには,相対的海水準は標高約-30 mにあった.そして,縄文海進最盛期を示すと考えられる約6,800 cal BPには,細長い内湾が豊岡盆地の南端部に達した.しかし,日本列島で数多く報告されている完新世中期の高海面は確認されず,豊岡盆地は完新世の中頃には沈降傾向にあった可能性がある.これら本研究で得られた海面変化データに基づいて,10.7 ka, 7.9 ka, 6.8 kaにおける海岸線の位置を示した.

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© 2009 日本第四紀学会
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