第四紀研究
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論説
濃尾平野西部の上部完新統に残された養老断層系の活動による沈降イベント
丹羽 雄一須貝 俊彦大上 隆史田力 正好安江 健一齋藤 龍郎藤原 治
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2009 年 48 巻 5 号 p. 339-349

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抄録

濃尾平野で掘削された3本のオールコア(YM, OYD, KZN)を対象に,岩相記載,粒度分析,電気伝導度(EC)測定,AMS 14C年代測定を行い,濃尾平野西縁を画する養老断層系の活動に伴う地震性沈降の履歴を検出した.約1,200年前の堆積物において,KZNコアの陸成層では一時的にEC値が高まり,YMコアとOYDコアのデルタフロント堆積物では急激な細粒化が認められた.これらは急激な海面上昇により,河口付近では陸地が海面下に沈み,デルタフロントでは水深の増加と河口の後退により,粗粒物質の供給が激減した可能性を示す.急激な海面上昇は養老断層系の活動による地震性沈降に起因すると考えられ,この活動はAD 745年天平地震に対比しうる.また,約500年前にはKZNコアにおいて湿地の水没を示唆する植物遺体の含有量が急減し,YMコアではデルタフロント堆積物の急激な細粒化が認められた.これらの変化も同様に,相対的海面上昇を記録していると考えられ,AD 1586年天正地震による地震性沈降に起因する可能性がある.

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© 2009 日本第四紀学会
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