抄録
地質年代決定精度の高さで注目されている石灰質ナンノ化石層序に基づいて,パナマ地峡の成立と地球の寒冷化との関連について概説した.高緯度海域—北極海域での石灰質ナンノ化石調査結果は,2.75 Maのパナマ地峡の成立とともに北極海域の急激な氷床拡大が発生したことを示唆し,そのタイミングで,寒流系種Coccolithus pelagicusの現在の分布様式が確立する.また,ベーリング海を介した太平洋海水の北極海,東グリーンランド海への流入も,このタイミングで発生し,いわゆるQuaternary-style climateが2.75 Maに開始したことを示唆する.