第四紀研究
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論説
長野県神城盆地の局地的な地形変化に対する完新世の花粉化石群集の応答
竹本 仁美奥村 晃史
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2012 年 51 巻 1 号 p. 21-33

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抄録
糸魚川・静岡構造線活断層系北部に位置する長野県神城断層において,1996年に行われたトレンチ調査時に採取された堆積物を用いて花粉分析を行い,断層活動に伴う地形変化に対する完新世の花粉化石群集の応答を検討した.花粉化石には,断層運動に伴う地形変化による環境変化を堆積物中に記録している可能性がある.そのため,断層の活動履歴および盆地内に分布する河成段丘の離水年代と花粉分析結果の対比を行うことにより,断層運動と花粉化石群集の対応を検討した.
神城断層は,過去7,000年間に4回のイベントをくり返しており,イベントと一部の河床高度低下が同時期に起こったことが明らかになった.花粉ダイアグラムは,河床高度の低下と同期的に,生育が水分状態に支配されるような分類群,および盆地の上流域に分布すると考えられる分類群の変動を示している.
したがって,神城断層の白馬トレンチに認められる花粉分類群の変動は,地形変化を反映していると考えられる.このことは,断層運動が地形変化を伴う場合,花粉組成の変動から過去の断層運動を推定できる可能性を示している.
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© 2012 日本第四紀学会
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