第四紀研究
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2011年日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
地震考古学に関する成果の概要
寒川 旭
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2013 年 52 巻 5 号 p. 191-202

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抄録

考古学の遺跡で地震を研究する分野である地震考古学は,1988年に誕生した.遺跡に刻まれた地震痕跡は,遺構・遺物との関係から年代を絞り込むことが可能で,平面および断層形態を詳しく観察することもできる.例えば,南海トラフの巨大地震については,文字記録から発生の歴史がかなり把握されているが,地震痕跡の発見によって史料の空白を埋めることが可能である.また,活断層から発生した地震については,周辺の遺跡で地震痕跡を観察することによって,地震動による地盤災害の様子がわかり,被害の文字記録と合わせて地震の全体像を把握できる.液状化現象・地滑りなどの地変については,遺跡で詳しい観察が可能なので,これまで知り得なかった新たな知識を得ることが多い.一方,歴史学や考古学の立場からは,地震という概念を導入することによって,これまで謎とされていた現象が合理的に説明できるようになり,地域の歴史をより正確に把握することができる.

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© 2013 日本第四紀学会
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