第四紀研究
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52 巻, 5 号
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2011年日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
  • 寒川 旭
    2013 年 52 巻 5 号 p. 191-202
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    考古学の遺跡で地震を研究する分野である地震考古学は,1988年に誕生した.遺跡に刻まれた地震痕跡は,遺構・遺物との関係から年代を絞り込むことが可能で,平面および断層形態を詳しく観察することもできる.例えば,南海トラフの巨大地震については,文字記録から発生の歴史がかなり把握されているが,地震痕跡の発見によって史料の空白を埋めることが可能である.また,活断層から発生した地震については,周辺の遺跡で地震痕跡を観察することによって,地震動による地盤災害の様子がわかり,被害の文字記録と合わせて地震の全体像を把握できる.液状化現象・地滑りなどの地変については,遺跡で詳しい観察が可能なので,これまで知り得なかった新たな知識を得ることが多い.一方,歴史学や考古学の立場からは,地震という概念を導入することによって,これまで謎とされていた現象が合理的に説明できるようになり,地域の歴史をより正確に把握することができる.
論説
  • 中村 祐貴, 井内 美郎, 井上 卓彦, 近藤 洋一, 公文 富士夫, 長橋 良隆
    2013 年 52 巻 5 号 p. 203-212
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    長野県野尻湖底には,過去10万年以上にわたり堆積物が累積しており,後期更新世以降の湖水位変動を明らかにし,さらにはその原因である水収支の変動を検討できる可能性がある.本論文では,野尻湖の音波探査記録に見られる湖水位指標と火山灰年代との組み合わせから,湖水位変動を復元した.その結果,湖水位は過去約4.5万年間に8回の上昇・下降を繰り返していることが明らかになった.復元された湖水位変動と,野尻湖における花粉組成や全有機炭素濃度プロファイル,グリーンランドのNGRIPや中国のSanbao/Hulu洞窟の酸素同位体比プロファイル,および地球規模の寒冷化イベントの時期とを比較すると,寒冷期とりわけHeinrich eventなどの急激な寒冷期と湖水位上昇期とが対応している.寒冷期に湖水位が上昇する要因としては,地球規模の急激な寒冷化の影響を受け,冬季モンスーンが強化されたことに伴う日本海からの水蒸気供給量の増加によって,この地方の降雪量が増加したことが,主要因として考えられる.
  • 廣瀬 孝太郎, 吉岡 薫, 入月 俊明, 岩井 雅夫, 後藤 敏一
    2013 年 52 巻 5 号 p. 213-224
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    海洋における一次生産者としてその動態が環境に大きな影響を与える珪藻群集を,堆積物中の遺骸からできるだけ忠実に再現するために,超音波印加による簡便な処理法を考案した.動物の糞粒(fecal pellet)が主体である集塊が容易に泥化し,かつ珪藻殻の破壊による消失が認められないことから,超音波印加は珪藻分析において有効な処理法であることを示した.また,従来の処理方法である過酸化水素処理を行った同一試料の珪藻遺骸群集と比較した結果,過酸化水素処理ではデカンテーションの過程において除去した上澄みとともに流出する可能性のある小型の分類群を,超音波印加処理を用いることで忠実に計数できることが明らかになった.さらに,超音波印加処理を行った試料の集塊(糞粒)と基質部分(細粒分)の珪藻遺骸群集の違いから,化石としては保存されない一次消費者の動態の一部を堆積物から明らかにしうる可能性を指摘した.
総説
  • 椎原 美紀, 堂満 華子, 鳥井 真之, 長橋 良隆, 奥野 充
    2013 年 52 巻 5 号 p. 225-236
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    鬱陵隠岐テフラ(U-Oki)は,姶良Tnテフラ(AT)と鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)の間の層準に産出することから,日本海南部のコア試料の重要な年代指標として利用されてきた.しかし,鬱陵島でのテフラ層序の再構築と14C年代から,U-4テフラがU-Okiに対比され,U-3テフラに対比されるテフラも日本海・日本列島にも広く分布することが確認されたことから,従来U-Okiとされたテフラが,いずれに対比されるのか識別する必要が生じている.本論では,鬱陵島,日本海ならびに日本列島における鬱陵島起源の完新世テフラの層序・特徴・年代について整理し,日本海GH87-2 K-Bコアを含む対比の検討事例,既存データによる対比の再検討,噴火規模の推定を行い,鬱陵島起源テフラの対比手法の有効性,今後の展望について議論した.
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