抄録
縄文時代後晩期の低湿地遺跡である中山遺跡の自然形成過程を明らかにするため,弘前大学調査地点A区の地形学的,地質学的な検討を行った.対象地点は馬場目川左岸の丘陵と段丘を開析する谷底低地に立地する.遺跡を埋積する堆積物の層序,層相および遺物のオリエンテーションから,大型の木器・木材を含む縄文時代後期後葉の遺物群は南西〜北東の古流向をもつ流路に廃棄されたものと推定される.一方,流路の上位で検出された,トチ果皮などの濃密な食料残滓を伴う遺物群は,流速の低い湿地の堆積環境で形成されたと推定される.さらに,中山遺跡A区では縄文時代晩期初頭まで遺物が認められるが,突発的なイベント堆積物と考えられる礫層の堆積以降は放棄される.後続する時期の遺物は同じ谷底低地の約40m北西に位置し,2mほど低いB区で検出されるようになる.このことから,中山遺跡に居住した縄文時代人は,谷底低地の環境変化に対応して土地利用を変化させていったと考えられる.